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第3話

家族
186
2018/10/13 14:09

何ヶ月たっただろうか。
沢山の人がお見舞いに来てくれて意外と時間がすぎるのが早かった。ようやく、この窮屈な所から抜け出せると思ったら嬉しいが、私にはこの先の未来が霞んでいて、何も見えない。足元も不安定だ。

どうして私なんだ...












お母さん
あかりー?
準備終わったの?車つめちゃうわよー!
はやくねー!
急に響くお母さんの声。
私は急いで返事をする。
あかり
はーい!今行くー!




車の中では、お母さんはいつも通りに話しかけてきた。入院どうだった?隣の盛岡さんがね~..!今日のご飯は~。新しいテレビ番組がね~。など。ほんとにいつも通りだ。ただしお母さんだけだが。



私は、俯いてただ話を聞いていた。


何故だろう。

私はどんな風に話してたっけ?


どんな風に笑ってたっけ?

そんなことさえ、私は分からなくなってしまっていた。





家に着いてからは、私は部屋で独りベッドに寝転がりぼーっとしていた。






あかり
私、これからどーしよ...
バレーができなくなったということは、マネージャー?いや、それはやめておこう。辛くなるから。

他の仲間が一生懸命練習して、汗かいて笑いあって、真剣な眼差しをボールに向け、ひたすらボールだけを追いかけている所を見たら、私はきっと耐えられない。

もういっその事、バレーを、バレーに関わるもの全てから逃げてやめてしまおうか。









その方がいいかもしれない。

どうせ私はバレーができないのだから。





お母さん
あかりー!
ごはんよー!降りてらっしゃーい!
あかり
ご飯か.....
あかり
...はーーい!
自分の席につく。
それがいつも通りすぎて足の怪我のことを一瞬忘れそうになる。



お母さん
今日はね、お母さん頑張っちゃった!
あかりの好きなもの沢山用意しておいたからね。
ささ、お父さんもはやく席についてくださいな!
お父さん
あぁ
お母さん
ちょっとお父さん!久しぶりのあかりなんですよ!
何か言うことあるんじゃないですか??
仕事だなんだ言い訳つけてお見舞いもこなかったじゃないですか!そのツンデレも50すぎのおじさんがやったって需要なんてないんですよ!
また、始まった。相変わらずだ。

お父さんは苦虫を潰したような顔をしていて、頭をかいている。
お父さん
まぁ、あれだ。
あかり、おかえり。
あかり
うん、ただいま。
お父さん。
お母さん
それだけですか!?
心配したーとか大丈夫かーとかないんですか!
まったく、もーこれだから~~!
まだお母さんは何かを言っている。
お母さんはお父さんのこととなるとうるさいからな。
仕方ない。








折角のお母さんのご飯、少し食べすぎた。
でも、誰だってあんな顔されたら食べざるをえないだろう。あんな瞳をキラキラさせて、私をみてくるのだから。
お母さん
調子にのって食べさせすぎちゃったわね笑
ちょっとゆっくりしてなさい笑
あかり
うん笑
ソファに座ってゆっくりする。
テレビをつけると、ちょうどフィリピン対日本のバレーの試合が行われていた。前までの私ならずっと見ていただろうが、今はバレーをみれるような精神を持ち合わせていなかった。
だから、すぐさまチャンネルを変えた。

すると
お母さん
あかり、お母さん達はどんな事があってもあなたの味方だからね。
お母さん
きっとこれから、あなたは沢山の壁にぶつかって逃げたくなる時もあると思う。でもね、時には逃げたっていいと思うの。今まで1番あかりのことをみてきて応援してきたのはお母さん達だから、あかりが真っ直ぐ向いて努力をしてきたの知ってるわ。だから、悩んで悩んで悩みさなさい。でもどうしても辛くなったらお母さん達に言うのよ。
あかり
お母さん...
お父さん
大事なのは最後自分がどうなっているかだ。
途中目を逸らしたり逃げたりしたって、それは悪いことではない。きっとお前にとって必要な時間なはずだから。
お前はお前のやりたいと思うこと、信じるものを貫け。どんなあかりでもお前は俺たちの自慢の娘だ。
あかり
お父さん...
なんだろう

目が熱くなってくる

これまで抑えてきた何かがとめどなくでてきそうだ。

あかり
どーしたのさ、2人して笑
冗談めかしに言う。 

だが、耐えられそうにない。
あかり
もう眠たくなったから寝るね!
不自然すぎて、自分でも笑えてきた。
涙声だったし、きっと2人も気づいていただろう。

それでも、私は2人にこんな恥ずかしい顔見せたくなかった。

泣いているはずなのに、何故か幸せで嬉しくて...

今きっととてつもなくぶさいくな顔しているだろう。






































今日はいい夢が見れそうな予感がする。




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