何ヶ月たっただろうか。
沢山の人がお見舞いに来てくれて意外と時間がすぎるのが早かった。ようやく、この窮屈な所から抜け出せると思ったら嬉しいが、私にはこの先の未来が霞んでいて、何も見えない。足元も不安定だ。
どうして私なんだ...
急に響くお母さんの声。
私は急いで返事をする。
車の中では、お母さんはいつも通りに話しかけてきた。入院どうだった?隣の盛岡さんがね~..!今日のご飯は~。新しいテレビ番組がね~。など。ほんとにいつも通りだ。ただしお母さんだけだが。
私は、俯いてただ話を聞いていた。
何故だろう。
私はどんな風に話してたっけ?
どんな風に笑ってたっけ?
そんなことさえ、私は分からなくなってしまっていた。
家に着いてからは、私は部屋で独りベッドに寝転がりぼーっとしていた。
バレーができなくなったということは、マネージャー?いや、それはやめておこう。辛くなるから。
他の仲間が一生懸命練習して、汗かいて笑いあって、真剣な眼差しをボールに向け、ひたすらボールだけを追いかけている所を見たら、私はきっと耐えられない。
もういっその事、バレーを、バレーに関わるもの全てから逃げてやめてしまおうか。
その方がいいかもしれない。
どうせ私はバレーができないのだから。
自分の席につく。
それがいつも通りすぎて足の怪我のことを一瞬忘れそうになる。
また、始まった。相変わらずだ。
お父さんは苦虫を潰したような顔をしていて、頭をかいている。
まだお母さんは何かを言っている。
お母さんはお父さんのこととなるとうるさいからな。
仕方ない。
折角のお母さんのご飯、少し食べすぎた。
でも、誰だってあんな顔されたら食べざるをえないだろう。あんな瞳をキラキラさせて、私をみてくるのだから。
ソファに座ってゆっくりする。
テレビをつけると、ちょうどフィリピン対日本のバレーの試合が行われていた。前までの私ならずっと見ていただろうが、今はバレーをみれるような精神を持ち合わせていなかった。
だから、すぐさまチャンネルを変えた。
すると
なんだろう
目が熱くなってくる
これまで抑えてきた何かがとめどなくでてきそうだ。
冗談めかしに言う。
だが、耐えられそうにない。
不自然すぎて、自分でも笑えてきた。
涙声だったし、きっと2人も気づいていただろう。
それでも、私は2人にこんな恥ずかしい顔見せたくなかった。
泣いているはずなのに、何故か幸せで嬉しくて...
今きっととてつもなくぶさいくな顔しているだろう。
今日はいい夢が見れそうな予感がする。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。