第15話

かくしごと②
2,170
2021/01/16 16:25
(hkt side)

大我が余命の話をしたときから、悔いの残らないように大我がやりたかったことをたくさんやった。そして、大我という存在を忘れないように、毎日毎日愛し合った。

最近、大我はベランダに出てどこか遠くを見つめることが増えた。

「大我〜??」

そう言って、近くにいき横顔をみる。
こんな間近でみても、陶器のような綺麗な顔をしている。

大「ねぇ、北斗?“月が綺麗ですね”」

「え、大我、何言って…………。」

そう言うと、ふふっとまるで大人の女性のように笑って、俺の頬をなでた。

大「北斗、本よく読むから絶対この意味わかるはずだよ。もう寒いから中はいるね。」

嫌な予感がした。大体俺のこういうのは当たることが多い。

「大我…、いなくならないよね?まだ」

そう聞くと

大「そうね、まだ死神のお迎えは来てないかな?」

そう答えた。大我は嘘をつかない性格。でもこのときだけは、その言葉をそのまま信じることができなかった。

いつもどおりの夜。同じベットに入り、抱きしめあって、大我の頭を撫でていた。

「大我?明日は大我と出会って3年目になるね。拾ったときはあんなに小さかったのに…。」

俺の目からは熱いものが溢れる。

大「北斗と出会ったのって、海辺だったよね。俺が、波に流されそうになってたところを北斗が助けてくれて」

「そうそう。ぼーっと海眺めてたら、白いものがどんどん遠くにいって、でもよく見たらなんかもがいてる姿が見えて。あれは、マジで焦った。」

大「あのとき、北斗が助けてくれなかったら、北斗とこんな幸せになってないし。」

「そういえば、大我も俺のこと救ってくれたことあったよね。覚えてる??」

そう俺が言うと、大我の動きが一瞬止まって、俺の方を見る。

大「北斗、覚えてくれてたんだね。もう忘れちゃってるかと思ってた。」

「忘れるわけない。大我があそこで助けてくれなかったら、俺人間になった、こんなかわいい大我に出会えてないわけだし。でも、背中の傷…」

大「これは、俺が頑張った証。この傷を見るたびに幸せな気持ちになるよ。」

そんなこと言われたら、泣いてしまうじゃないか。

さっきよりもさらにギュッと大我を抱きしめる。

大「ほくっ、痛いっ」

「抱かせて。お願い」

そう言うと、

「それはこっちのセリフ。抱いて、北斗…。」

その時の笑顔はまるで、もう二度と会えないかのように感じられた。



大我が俺のそばから離れていく夢を見た。

ハッと目を覚ますと、

昨日までいた大我の温もりが消えていた。

部屋中探してもどこにもいない。

もう帰ってこない。そんな予感がする。

俺は、部屋から飛び出した。




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