(hkt side)
大我が余命の話をしたときから、悔いの残らないように大我がやりたかったことをたくさんやった。そして、大我という存在を忘れないように、毎日毎日愛し合った。
最近、大我はベランダに出てどこか遠くを見つめることが増えた。
「大我〜??」
そう言って、近くにいき横顔をみる。
こんな間近でみても、陶器のような綺麗な顔をしている。
大「ねぇ、北斗?“月が綺麗ですね”」
「え、大我、何言って…………。」
そう言うと、ふふっとまるで大人の女性のように笑って、俺の頬をなでた。
大「北斗、本よく読むから絶対この意味わかるはずだよ。もう寒いから中はいるね。」
嫌な予感がした。大体俺のこういうのは当たることが多い。
「大我…、いなくならないよね?まだ」
そう聞くと
大「そうね、まだ死神のお迎えは来てないかな?」
そう答えた。大我は嘘をつかない性格。でもこのときだけは、その言葉をそのまま信じることができなかった。
いつもどおりの夜。同じベットに入り、抱きしめあって、大我の頭を撫でていた。
「大我?明日は大我と出会って3年目になるね。拾ったときはあんなに小さかったのに…。」
俺の目からは熱いものが溢れる。
大「北斗と出会ったのって、海辺だったよね。俺が、波に流されそうになってたところを北斗が助けてくれて」
「そうそう。ぼーっと海眺めてたら、白いものがどんどん遠くにいって、でもよく見たらなんかもがいてる姿が見えて。あれは、マジで焦った。」
大「あのとき、北斗が助けてくれなかったら、北斗とこんな幸せになってないし。」
「そういえば、大我も俺のこと救ってくれたことあったよね。覚えてる??」
そう俺が言うと、大我の動きが一瞬止まって、俺の方を見る。
大「北斗、覚えてくれてたんだね。もう忘れちゃってるかと思ってた。」
「忘れるわけない。大我があそこで助けてくれなかったら、俺人間になった、こんなかわいい大我に出会えてないわけだし。でも、背中の傷…」
大「これは、俺が頑張った証。この傷を見るたびに幸せな気持ちになるよ。」
そんなこと言われたら、泣いてしまうじゃないか。
さっきよりもさらにギュッと大我を抱きしめる。
大「ほくっ、痛いっ」
「抱かせて。お願い」
そう言うと、
「それはこっちのセリフ。抱いて、北斗…。」
その時の笑顔はまるで、もう二度と会えないかのように感じられた。
大我が俺のそばから離れていく夢を見た。
ハッと目を覚ますと、
昨日までいた大我の温もりが消えていた。
部屋中探してもどこにもいない。
もう帰ってこない。そんな予感がする。
俺は、部屋から飛び出した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。