ガスマスクを被るハドは、浮かれた足取りで部屋の窓を開けてガスを外へと逃がす。
ハドはおもむろにマスクを外すと、床に倒れる白雪姫へと近づく。
白雪姫の髪や頬を触れていき、ハドは無邪気に笑う。
嬉々として白雪姫を抱き上げようとしたとき。
扉を開け放ったアルは、ハドを睨みつけながら部屋に入っていく。
ゆらりと静かに立ち上がるハドは、近づいてくるアルに視線を向けて首をかしげる。
ハドはわざとらしく自分の肩を抱いて怯えてみせる。
だが、眉一つ動かさずに殺気を強めていくアルに、ハドは背筋が冷たくなるのを感じた。
子供の鬼ごっこのように駆け出すハドは、部屋の扉の前でピタッと立ち止まる
ハドはそう告げると部屋を出ていく。だけど、すぐにぴょんと頭だけをだして。
素早く扉を閉めたハドは、逃げる兎のように駆けていった。
アルは一度、深く息を吐き出すと白雪姫へと近づく。
抱き上げてお姫様抱っこするアルは、白雪姫に視線を向ける。
幼さが残るけど白く美しい寝顔。小さく寝息を立てている。
アルはしばらく白雪姫を見つめ続けていた。
その表情は、どこか切なくて悲壮の色がうかがえた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!