ふと言葉が漏れる
私は思い切り息を吸い
水の中へ沈んでいった
何故泳がないの?って?それはお兄ちゃんに
『深くまで潜れ。でないと帰れない』
って言われたから
着々と深い所まで歩いた
私は水に浮くことができない。
別に水が怖い訳では無いのだ。
だけど何故か昔から水に浮くことができず沈んでいくばかりだった。
そんなことを考えていると
ゴポゴポ……
苦しくなって口から空気がでてきた
辛い……
水の中はそんな思いも搔き消すくらいに暗く冷たい
身体を動かそうとしても上手く動かない
ゴポゴポ………
また空気が漏れる
キラキラと輝く空気が水面へ向かって浮いてゆく
私はそれをただ見つめることしか出来ない
深く暗い闇に引きずり込まれながら─────
………
……
…
..
.
目を開けたらそこは白い天井があった
名前を呼ばれた方をゆっくり見た
そこには─────────
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!