学校からの帰り道、途中まで一緒に帰っていた茅燦と別れ、希彩はポケットからあの石を取り出す。
ポケットに入れていたからか、自分の体温で少し温かくなったその水色の固体。
じっくりと空の夕日に翳して見つめる。
落ちてきた時空は雲一つない快晴だった。
雹か何かだとしてもそんなものが降るような天気ではなかった。
ましてや落ちてきたのは石だ。溶けて液体になる物ではない。
ない頭で引き出した思い当たる現象の名前を呟く。
ファフロツキーズ、一定範囲の場所に多数の物体が降ってくる現象のうち、雨、雪、黄砂、隕石などの一般的によく知られている原因のものを除く「そこにあるはずがないもの」が空から降ってくる現象。
多数の物体が降ってくる現象には入らないが、「そこにあるはずがないもの」の枠には入る。
滅多に遭遇することが出来ない現象だ。
そう思うと希彩は少し胸を高鳴らせた。
これはきっと奇跡に近い出来事かもしれない、もしかするとこの石を調べたらもっと凄いことがわかって、大きなニュースになるんじゃ?
そんな風に考えた。
その時、ふと石の中心がキラリと光った。
太陽の光では無い、中心の金色の線が鋭く不自然に光ったのだ。
少し違和感を覚えてよく目を凝らして石の中心を見てみた。
その瞬間、目の前が青白い光に包まれた。
刹那、希彩は何が起こったのか分からなかった。
数秒経って自身の手の中にある石が光っていることに気づく。
急な出来事でパニック状態に陥る希彩。
光は大きく希彩を照らした後、段々と小さくなっていき消えた。
呆気に取られてぽかーんとしていると、背後から怒鳴り声が聞こえた。
見ると1人の青年が立っている。
焦った様子で駆け寄って希彩の肩を掴む。
その青年は伸びた前髪で目元が隠れており、物凄い剣幕でこちらを見るのでとても怖い。
怖気づきながらも向かい合う青年に答える希彩。
青年はその様子を見て我に返ったのか、掴みかかっていた姿勢を解いた。
そう言うと青年は頭を抱えてしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。