あなたside
さっき来た道を戻った。
と言っても私は物に触れることが出来ないからエレベーターなんてものは使えなくて、
隣に設置されている非常階段を使った。
幸い時間はたっぷりある。
ゆっくり降りながら1階に着いた
外に出てさっき見つけたブルーシートの方に向かった。
ブルーシートを潜り中を見ると警察の人が付けたであろう印やらなんやらがあった。
地面に赤黒く塗られているその血は間違いなく私のものだ。
でも、地面を見ても何も思えない。
ただ、酷い血の跡だと感じるだけでどこか他人事だった。
記憶が無いからどこか他人事
そんなの当たり前だろう。
自分が死んだという実感は全くしてこないけれど、壁は通り抜けるしものには触れられないしすれ違う人には見えていない。
こんな所で、私は一体何をしてるんだろう。
そう言って女性達が来た。
走りながらブルーシートの中にずかずかと踏み込んで来る。
そう言っても彼女たちには聞こえていないよう
ただの野次馬か?
それならなぜこんな所に入ってくるんだ?
こんな人達が関係者なわけが無い。
1人はとても気味悪そうにそう言っている。
え、
そんなことをキャッキャと言っている彼女たちにとてつもない怒りが沸きあがる
笑顔でそう言っている彼女は一体どんな気持ちでいるんだろう。
当の本人が見えないとはいえ目の前にいるというのに、
無神経なまでにこの場所とそぐわない明るい声を上げる。
その声が私の怒りをさらに蓄積させていく。
そんな夢見心地な顔をして言っている
そんな言葉を言われているとはつゆ知らず、
ルンルン気分で女たちは帰っていった。
to be continued…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!