第7話

知り合いかよ
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2021/03/07 22:35

外さみーし!


……ったく。
服くらい自分で選べっつーの。


26歳のいい歳した大人なんだから。
俺だってセンス普通なんだし。

女
わぁー!カッコイイ!
女
どうするぅ?声かけとくー?

信号待ちをしていたら、
斜め後ろの女がこっちを見てくる。


外に出ると大体こうなっから、
面倒なんだよ……。


つーか、こっちまで丸聞こえだし。
大声で喋る女とかぜってぇ興味ねぇわー……。

女
あのっ!
風神珀
風神珀
ん?どうかした?

まずは基本ニッコリと微笑んでみる。


お客2
お客2
……っ!!

え、えっと、メアドとかっ
教えてもらえないですか?


ほら、また俺の罠に引っかかった。
つまんないのー。

風神珀
風神珀
初対面だし、そういうのは無理かな。
悪用とかされたら嫌だからね。
お客1
お客1
で、ですよね……。

普通ありえないでしょ。

初対面の相手にメアド聞く?
相手のこと何も知らねぇのに怖すぎんだろ。

風神珀
風神珀
ここだっけ

最近、若者に人気のショップ。


人多そうで嫌だな……。
チャッチャと済ませて帰ろっと。


店に入って、大ちゃんらしき人を探す。

大ちゃん、大ちゃん、
……あ、いた。

風神珀
風神珀
おーい、大ちゃん決まった?

大ちゃんの方に歩いていくと、
服を両手に数着は持っている。

飛鳥馬大貴
飛鳥馬大貴
それがさぁ!
どれもたけぇんだよー……
風神珀
風神珀
フッ、
んなのファンに買ってもらえば?
飛鳥馬大貴
飛鳥馬大貴
そんな卑怯なこと俺はしないし!
風神珀
風神珀
あっそ、決まったら電話して。

大ちゃんにそう伝えたあと、
すみに配置されたベンチに腰をかける。


こんな風に出掛けたの久々かもな。
俺独りじゃ出掛けようとかまず思わないから。


空気がちょっと慣れない。

風神珀
風神珀
……ん?

ふと俺の目は女に留まる。


……あの後ろ姿、どっかで見かけたような。
えーと、誰だっけ?


じーっと探るようにして横顔を見つめていると、
目が合って思い出さないまま声をかけられた。


桜樹梓
桜樹梓
えっ、風神さん?
風神珀
風神珀
うぉー、偶然っ!

声でようやく気づく。


珍しく髪を高くまとめてたから
すぐに分かんなかったけど、
梓ちゃんだったのか。


……いつもより大人っぽい雰囲気だし。

桜樹梓
桜樹梓
風神さんも、こういうお店で買われるんですね。
風神珀
風神珀
笑いながら言うなよ、バカにしてるだろ
桜樹梓
桜樹梓
ふふ、そうじゃなくて。
意外だってことですよ。
風神珀
風神珀
どっちにしろいい気しねぇし……

ま、笑った顔。
見れたからいいけどもさ。

風神珀
風神珀
俺はただ友達の服選びに着いてきてるだーけ
桜樹梓
桜樹梓
なら、私にも服選んでくれませんか?
風神珀
風神珀
は、?
桜樹梓
桜樹梓
ベンチに座ってるだけじゃ暇でしょ?

ずいぶんと急なお願いだな……。
なんて、本当は内心喜んでる自分だけど。

風神珀
風神珀
しゃーねぇな、特別な
桜樹梓
桜樹梓
やった!

無邪気に声に出して喜ぶ姿なんか、
天使そのものだよな。
一般人にはとても見えない。

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