外さみーし!
……ったく。
服くらい自分で選べっつーの。
26歳のいい歳した大人なんだから。
俺だってセンス普通なんだし。
信号待ちをしていたら、
斜め後ろの女がこっちを見てくる。
外に出ると大体こうなっから、
面倒なんだよ……。
つーか、こっちまで丸聞こえだし。
大声で喋る女とかぜってぇ興味ねぇわー……。
まずは基本ニッコリと微笑んでみる。
ほら、また俺の罠に引っかかった。
つまんないのー。
普通ありえないでしょ。
初対面の相手にメアド聞く?
相手のこと何も知らねぇのに怖すぎんだろ。
最近、若者に人気のショップ。
人多そうで嫌だな……。
チャッチャと済ませて帰ろっと。
店に入って、大ちゃんらしき人を探す。
大ちゃん、大ちゃん、
……あ、いた。
大ちゃんの方に歩いていくと、
服を両手に数着は持っている。
大ちゃんにそう伝えたあと、
すみに配置されたベンチに腰をかける。
こんな風に出掛けたの久々かもな。
俺独りじゃ出掛けようとかまず思わないから。
空気がちょっと慣れない。
ふと俺の目は女に留まる。
……あの後ろ姿、どっかで見かけたような。
えーと、誰だっけ?
じーっと探るようにして横顔を見つめていると、
目が合って思い出さないまま声をかけられた。
声でようやく気づく。
珍しく髪を高くまとめてたから
すぐに分かんなかったけど、
梓ちゃんだったのか。
……いつもより大人っぽい雰囲気だし。
ま、笑った顔。
見れたからいいけどもさ。
ずいぶんと急なお願いだな……。
なんて、本当は内心喜んでる自分だけど。
無邪気に声に出して喜ぶ姿なんか、
天使そのものだよな。
一般人にはとても見えない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。