「ねぇ、ねぇ。なんでそんなこと言ったの?」
ぷくーっと両頬を膨らませているから、もちもちしたニキビひとつない肌の方が目につく。
「だってもう、ヌナは高校卒業なんだよ?」
「まだ3年生になったばっかりでしょっ!」
この子の言うことは正しい。
つい二ヶ月ほど前に、可愛いこの子はわたしと同じ高校へ入学。
私は三年生、最上級生となった。
「んん”~なんでって、ねぇ?」
「誤魔化さないで!」
プンプンと効果音のつきそうな可愛い怒り方をするもんだから、つい柔らかい髪に指を通してしまう。
そんな私の手を握って詰め寄ってくるのは(可愛いから)いいけれど、そう言われたって明確とした理由を私は持ち合わせていない。
「本当だよ、しっかりした理由はないの。」
「むぅ~じゃあ、」
「強いて言えば、女の子が怖いからかな。」
「ぬなっ!!」
ヌナは悪くないの!
みんなを魅了しちゃうぐーちゃんが悪いんだよ!
そんな言い訳を頭の中で流してみては、可愛いこの子にそんなことは言えないと頭を振った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。