一度触れた唇がゆっくり離れると
今度はゆっくりと感触を確かめるような
優しいキスが降ってくる
どうしていいか分からずに
唇を硬く結んでいた私に
熱っぽい視線を向ける
彼の甘い囁きが聞こえてきて
そんな彼に魅せられた私の隙をつくように
唇の隙間から、テヒョンの舌が入ってくる
だけどすぐに深くじゃなくて
舌先を触れ合わせて
お互いのカタチを確かめるように
彼の舌はゆっくりと私のナカに触れてきて
内側から蕩かされるような感覚に
頭がポーッとしてくる
しかも目の前ではテヒョンが私の名前を呼んで
物欲しそうに瞳を蕩けさせていて
胸がキューっとなる
あ………また、優しいキス
くちゅっと音を立てながら
舌同士がゆっくり絡み合って
吐息まで溶け合うようで
すごく甘くて…
いくら個室とはいえ
こんな誰がいつ入ってくるかも分からない場所で
変装も何もなく、深いキスをしているなんて
絶対にダメなのに
すぐにでも、やめないといけないのに
縋り付くように彼の肩に手を回すと
私の後頭部に回っていた彼の手が
私の頬を優しく撫でてくれた
そしてそれを合図かのように
キスの激しさは増していって
自分のなのか彼のなのか分からなくなるほど
深く深く絡まる
夢中で求める彼の手が
私の腰に触れると
信じられないほど甘い声が漏れ出てしまう
テヒョンがくれるキスも
感じる温もりも、鼻を掠める彼の香りも
全部が心地よくて
そんな彼の全てに、呑み込まれてしまいそう
だけどそんな私とは反して
テヒョンの唇は、銀糸を名残惜しそうに引きながら
離れていってしまった
私のおでこに、おでこをくっつけたまま
テヒョンは苦しそうに眉を顰めている
フニャッと柔らかく微笑むテヒョンは
相変わらず、すごく優しい顔をしていて
『伝えたいこと』…が何なのかは分からないけど
絶対違うって分かってるけど
変な期待が頭をよぎってしまう
前に彼に抱かれた時に
『適当な気持ちじゃない』って言ってくれたこと
もしかしたら…もしかしたら…
テヒョンも私と同じ気持ちで
少しはいてくれてるのかなって
そんな……淡い期待を
もう一度、軽く触れるだけのキスをすると
テヒョンは私から離れていった
2週間後……
いったい、何を伝えてくれるつもりなの?
もし…もしもだよ
私が想像していることが、現実になったとしたら
テヒョンと想いが通じ合ったら
もうそれだけで幸せで、倒れちゃいそうだよ
でも……
だけど………
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その時私は……いったいどうするの?
私は……………
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。