春乃side
声が聞こえた。目の前にいる男とは別の声。
気づけば男は、いなくなってて。
何が起こったのかわからないくらいで。
“ありがとうございます”が遮られた。
…え?はるって言った?
暗くてよく分からなかったけど、
何でここに、いるの?
あなたの顔が一瞬にして心配の顔に
今度は怒った顔
あなたがわたしの前にかがむ
優しく笑うのが、暗くても分かる
手渡された、缶ジュース。
あ、まだちゃんとお礼言ってなかったな…
見ると泥だらけ。
押し倒されたときに付いたんだ。
早く洗い流したい。記憶と一緒に。
翔くんの缶ジュースが、こつんって音を立てた。
あなたは、何か言いたげだったけど、その言葉で終わった
本当に申し訳なさそうに頭を下げてきた。
でも、わたしは、
“いいよ”
なんて、言えなくて。
突然、言われた言葉。
わたしも心に誓った、翔くんに会わない
翔くんの顔は、穏やかで
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。