雅紀side
櫻井さんが話してくれたことは、全く知らなかったことで。
俺が想像してたことは、はるかに越えてて。
春乃と付き合ってたこと、
春乃が俺に泣いて飛んできたときのこと、
まだ春乃が好きだってこと、
映画館に行った後のこと、
会わないと約束したこと、
お見舞いに来たときのこと。
櫻井さんは所々そうやって自分を悪者にしてた。
正直、たくさんありすぎてちょっとよく分かんない。
そんなこと言われなくても分かってる。
人一倍、優しくて。
人一倍、気遣いができて。
だから、俺に言わなかったんでしょ?
櫻井さんの顔は、本当に真剣で。
ぁあ、春乃のこと本当に好きなんだな、って思った。
え、ぜりー
櫻井さんは少しだけ笑ってた。
病室を後にして思うことは、春乃のこと。
春乃の様子がおかしいのは、櫻井さんのことだよね?
頭の悪い俺でもそれだけは分かる。
気づけば病院の外で、春乃に電話をかけてた。
精一杯の明るい声で
その言葉を伝えて切った
伝わったかな
春乃?
春乃の好きな人は、誰?
きみの口から、
“『雅紀が好き』”
ただ、その言葉が聞きたいんだ
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。