第4話

#4
664
2018/08/23 06:07
あなたからの突然の電話
あなた
どうしたの?急に
櫻井翔
いやっ、あのー
歯切れが悪い翔くん
櫻井翔
なんか、久々だったから。はるに会ったの
あなた
…うん
櫻井翔
懐かしくてさ
懐かしい。

そんなに月日は経っていないはずなのに、

わたしもそんなふうに感じたんだ
櫻井翔
本当はさ
あなた
……、
櫻井翔
知ってたんだ。はるが大学受かったの
あなた
え?なんで?
大学に受かったのは別れてからだから、わたしは連絡をしていない
櫻井翔
後輩から聞いた
あなた
 そっか

ほんの少しの沈黙があって、あなたの声が聞こえてきた。
櫻井翔
はるなら受かるって分かってた

低くて、優しい翔くんの声。

隣で一緒に笑ってたころを思い出した
あなた
……って
櫻井翔
ん?
あなた
はるって呼ぶの未だに翔くんだけだよ。
櫻井翔
嘘マジで?
電話の向こうで目を丸くして驚いているあなたの顔が思い浮かぶ



付き合う前に、こんな話をしてたっけ……


-高校時代-

「なぁ、はるって呼んでもいい?」

『えっ』

「嫌だったらいいんだけど」

『全然嫌じゃないです!ただ、そんなふうに呼ばれたことないんで…』

翔くんは、優しく笑って、こう言ってくれたんだ。

「じゃあ、」
櫻井翔
俺だけの特別な呼び方な

あのときと同じ言葉が聞こえてきた。



翔くんが覚えてたのかどうかは分からない。

けど、わたしの胸は少しだけ高鳴った。



10分ぐらいお互いのことを話した。

でも、恋人のことには触れなかったんだ。

いや、触れられなかったんだ。
櫻井翔
なあ…
あなた
なに?
櫻井翔
また、連絡してもい?
少し間が空いて
櫻井翔
先輩と後輩として
あなた
うん。いいよ
この返事しか出来なかった。

断ることだって出来たのに。


なぜかまたあなたの声が聞きたい、そう思ってしまったんだ。


もう、終わったはずなのに

“「忙しくて構ってられない」”

そう、告げられて、あんだけ泣いて。

もう忘れようって決めたのに、忘れてたのに。



あの一瞬で過去に戻されてしまった。

そんな気がしたんだ。

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