あれから2年後。
私は今、人気絶頂の遊園地にいる。
ここで彼氏────冬馬と待ち合わせをしていた。
今日は付き合った記念日として遊園地デートをすることになったのだ。
そろそろかな?
辺りをきょろきょろ見回しながら今に来るかと待ち続けた。
走りながらこっちへやって来る。
付き合い始めた時から冬馬は私のことを呼び捨てで呼ぶようになった。
それに補うように私はコンタクトデビューを果たした。冬馬が「眼鏡無しの方がいい」と言うものだから、高校に入学してからコンタクトに変えようと思ったのだ。
案外、コンタクトも悪くない。
前まではあれほど怖いと恐れていたのに、いざ付けてみると全くだった。
手を繋いで歩く。彼の手がひんやりと冷たい。
確か、あの時も今と同じくらいに気温が低く、寒かった。───冬が訪れた合図だ。
***
チケットを購入し、園内へ入る。
家族連れや友人同士で遊びに来ている人が多く、園内は賑わっていた。
私達も便乗するように最初はジェットコースター、次はコーヒーカップに乗ったりと様々なアトラクションを楽しんだ。
時間も午前から午後へ変わり、一度どこかで昼食を済ませる。
午後からは怖いと評判の高いお化け屋敷に入り、その後はメリーゴーランドなどに乗った。
しばらくしてから休憩をとってキッチンカーで販売されているクレープを買う。近くのベンチに座ってシェアしながら食べた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、気づけば午後6時前になっていた。
カラフルなゴンドラが目立つ観覧車に向かった。
同時に私も頷く。
恐らく20代前半であろう若い女性の店員さんはにっこりと笑い、優しい声で「少々お待ちください」と言った。
少し時間が立って高校生のカップルであろう2人がゴンドラから降りてきた。
さっきのゴンドラに案内される。私が先に入り、続いて冬馬が中に入ってきた。
その言葉を聞いた直後、ドアが閉じる。
ゆっくりとしたスピードで少しずつ上っていく。
お互い無言のまま時間だけが過ぎていく。
もうすぐで頂上。そのまま私達を乗せるゴンドラが空への距離を縮める。あと少し、あと少し...。
その時、彼が口を開いた。
しーんと静まり返る。
すると観覧車に乗っているのにも関わらず、立ち上がった。揺れないか心配になる。
私に近づく。顔と顔が当たるのではないかというほどの距離感。ドキッとした。
直後、私の口に”柔らかいもの”が触れる。
目の前にはドアップされた冬馬の綺麗に整った顔。
───これが、キス。愛し合う同士が行うこと。
今、私達は観覧車の頂上でキスをしている。
しばらくしてお互いの唇が離れる。そして───。
もう一度、キスをした───。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。