驚きのあまり言葉を失う。
何故、今彼がここに居るのか。
今日は冬馬と会う日。それなのにも関わらず、どうして───。
てへっと舌を出す。
何故、凌斗がこの場に?
凌斗にはひと言も教えていないはず。冬馬と会うとは言ったが、待ち合わせ場所までは言っていない。
ならば、冬馬が───?
私の心を読んだかのように答える。
だとすれば、どうやって...。
...凌斗、まるで探偵みたいね。
案外子供っぽい一面があると思うとくすっと笑みが零れた。
折角だ。凌斗もいるし、この機会に今の姿を見て評価してもらおうかと考えた。
おかしくないといいんだけど...。
しばらく沈黙が流れる。
やっぱり変だったのかな?
2人とも、ただじーっと見つめているだけ。
こんなにも見られていると思うと恥ずかしくて堪らない。早く元の服装に着替えたい...。
すると、今まで黙っていた冬馬と凌斗が同時に口を動かした。
思ってもみなかった言葉に顔が赤くなる。
自分でも分かるくらいに熱い。まるで湯気が出ているのではないかと言うほどに。
どうして2人は平気で言えるのだろう。
1人顔を赤らめている私からすればただ単に不思議な話だった。
私は幼い頃から視力が悪く眼鏡をかけ続けていた。
今になって外されると視界がぼやけて私生活に支障が出てしまう。だから外すことはできない。
そもそも外したところで何になるのか。
「眼鏡を外したら美少女」というケースは、漫画やアニメの世界のようには通用しない。
もしかしたら彼らはそれを期待して叶わぬ夢に酔っているのかもしれない。
油断をしている隙に眼鏡を取られた。
「油断大敵」とはまさにこの事なんだと実感した。
それにしてもやばい。一気に見えづらくなった。
何処に凌斗と冬馬が居るのかは認識できるが、はっきりとまでは見えない。
視力が悪いって本当に不便...。
激しく否定する。
今でも見えづらくて苦労するというのに、眼鏡を外した状態で過ごすとなるともっと疲れる。
一刻も早く返してほしい。お願いだから。
ならば、一体どうしろと───?
そう疑問を抱くばかりだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。