店内の時計を見ると午後5時を指していた。
あれから約2時間は居たのか。時間が過ぎるのは限りなく早い。そう思った。
ささっと会計を済ませて外へ出る。
凌斗と冬馬の奢りだった。割り勘を提案したが「いいよ、2人で払うから」と揃いも揃って言われて言葉に甘えた。
季節も冬だからか、日が落ちかけていて空も暗くなっていた。
返答した途端、2人に手を掴まれる。
突然のことに驚きと恥ずかしさが同時に出る。
手汗をかいた。どうしよう。
凌斗と冬馬に手汗が移っていないといいけど...。
完全には状況を理解できてない私を無視して手を引いて走り出した。
***
冬馬の目的地と思われる場所に着く。
思わず声が漏れる。
私が見た光景は今の季節にぴったりのイルミネーション。美しいライトアップで輝かせている。
綺麗ね。なんてロマンチックなの...。
しばらくの間、目の前のイルミネーションに見とれていた。
暗かったものの、イルミネーションの光が彼を照らしたことで微笑しているのが分かった。
吐き捨てるように呟く。
この言葉から恐らくこの場所は冬馬が選んだのだろう。とてもセンスがいい。
数秒だけ沈黙が続いた。
それから真剣な顔つきに変わる。
1歩、また1歩と私に近づいた。距離が縮まる度にドキドキ、ドキドキ、と胸の高鳴りが激しくなる。
名前を呼ばれる。
ドキドキしたあまり、喉が詰まって声が出ない。
ずっと黙り込む私を見つめながら話を続ける。
彼らの声が重なり合う。
双子だからか言葉も同じ。息もぴったりだった。
何だろう。この気持ち。
その言葉を言われると嬉しくて...。でも何故か心がもやもやする。
この気持ちの正体は───。
先に冬馬が口を開く。
私から目を逸らそうとしない。とても真剣な目。
本当に私のことが好きなのだと分かる。
じっと見つめる。その目からひたむきな眼差しを感じ取れた。
冬馬と同様、私への好意が誠実だと思った。
...あぁ、そうか。ようやく分かった。
私が好きなのは───。
今までの中で感じた”ドキッ”と”ドキドキ”。
そして”もやもや”。
これよりも前に恋をしていた。
自然と恋へ落ちていた。自分でも気づかぬうちに。
これで全てが解決。何もかもがすっきりした。
さぁ、伝えよう。私の、この想いを。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。