時計を見ると針は13時を指している。
丁度いいタイミングで待ち合わせ場所に到着した。
冬馬はもう来てるのか否か。
きょろきょろと辺りを見渡した。するとある人物に目が止まる。あれは───。
間違いない。きっと彼だ。
そう確信した私は手を振りながら冬馬であろう人物に近づいていく。
にっこり微笑みながら手を振り返してくれる。
冬馬の私服、かっこいい...。
制服を着ている時とは違って、また別のクールさが溢れ出ていた。
マウンテンパーカー、ミラノリブニット、チェックネルシャツ、黒スキニーパンツ、シンプルスニーカーの5点で余裕のある大人コーデにキメている。
キレイめとカジュアルを上手く組み合わせていて、クールな冬馬に似合っていた。
”凄く可愛い”。
頭の中でひたすらリピートされる。
まさか男子からその言葉が出るなんて。そんなの反則だよ...。
ちなみに私はジャケット、モックネックのニット、フレアスカート、ショートブーツ。
オシャレ好きなしーちゃんと違って着こなせている自信はないが。
それでも褒めてもらえると嬉しかった。
ずっと気になっていたことだった。やっとの思いで聞いてみる。
彼は「ふふっ」と笑うと即座に私の手を取った。
残ってる手で人差し指を自分の口元に当てる。
それから私の手を握ったまま、私が来た道とは反対方向に何処かへ連れていく。
その時の冬馬はとても楽しそうな顔をしていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。