そっと私の手を離す。
冬馬に連れられた先は───。
此処のショッピングモールは最近できたばかりで名高い。
私もまだ入ったことはないが、この前しーちゃんが「中も広くて凄く良かった!」と教えてくれた。
共に足を踏み入れる。
ウィーン、と両サイドに自動ドアが開いた。自然と私達を招き入れるかのように。
中には沢山の店舗が揃っている。
流石だ。最近できたばかりだけある。
そう言って指をさした方向には洋服店が見えた。
もしかして冬馬は買う服を悩んでて、それを私に選んでほしいのかな?
でもそれだと兄である凌斗に頼めばいい話か。
一体、何が目的なのだろう。
思いながらもその洋服店を目指して歩いた。
***
洋服店に入ったのはいいものの、何故か私が冬馬に服を選んでもらっている。彼本人によると私に服をプレゼントしたいのだとか。
別にいいのに。そう遠慮しても「いいって」の一点張り。だから言葉に甘えた。───が、やはり異性に選んでもらうのには戸惑ってしまう。
どうしたものか...。
何着か私に手渡して試着室へ誘導した。
カーテンを閉めてハンガーからケーブル柄ロング丈ニットワンピを外す。
凄く可愛い。...けれど私なんかに似合うのかな。
試着をする前から頭の中に不安が過る。でもせっかく冬馬が選んでくれたんだ。着ないと。
1分もかかるか、かからない間に着替えが終わる。
全身鏡で身だしなみをチェックし、緊張しながらもカーテンを開けた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。