~あなた~
今日も来てくれた亜嵐くん。
お仕事ない日、ほとんど来てくれるの。
お仕事ある日も、時間あったら来てくれるし。
前ね、仕事で飲みに行った相手が酔っちゃって、大変だったんだって。
・・・この話、私しか知らないんだ、、
抑えようと思っても、抑えられないんだもん。
ちょうどお昼ご飯食べ終わった所で、
急いで行けば間に合うかもって。
いつもならご飯の後も、たくさんお話してから帰るから
なんかちょっと寂しいけど、
これが当たり前じゃないんだって忘れないようにしなきゃ。
謝ることじゃないのにな、
ほんと、亜嵐くんって根っから優しいと思う。
・・・誰目線だよって感じだけど。
パタンってドアが閉まって、一気に静かになる室内。
お客さんが来ないから、もう私もここにいる理由はない。
奥でお掃除してるチエさんに声をかけて、私も手伝うことにした。
私はシンクのお掃除任されて、洗剤ちょっとだけ持って向かった。
全然お掃除する機械がなかったから、今できて嬉しいな、なんて思ってたら、
こっちに来てくれたチエさん。
物を避けながら探すけど、やっぱりない。
きっとこれからも使うから、多めに買っといた方がいいよね。
気をつけてねってチエさんに送られて、
近くのスーパーに向かう。
大きな通りにでて、そこからずっとまっすぐ。
その時、コンビニの角を曲がってきたのは
そして、その後出てきた綺麗な女の人。
変装してもオーラがダダ漏れな亜嵐くんの手は、
確かにあの女の人と繋がっている。
力が抜けちゃって、その場に座りそうになったのをぐっと堪えた。
その代わり、熱い涙が溢れだしてきて、思わず走り出す。
どこに向かってるかもわからなくて、
ただただ、さっき見たあの光景を忘れたかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!