~あなた~
厨房に、チエさんと2人。
お湯を沸かす手が震えるけど、力を入れて踏ん張った。
まさか、亜嵐くんが私の料理をを食べる日が来るなんて、
ほんとにありえないよ。
実感が湧かない。
・・・毎日作ってるんだから、大丈夫だよね、
今更ながら、
味、濃すぎないかな、とか、
パスタ、茹ですぎたかも、って
すごく心配になる。
きっと、ナポリタンを私に作らせたことを謝ってるんだろうな。
チエさんとお話しながらも、手を動かす。
いつもの感じになってきて、流れるように完成した。
・・・私が、亜嵐くんと隼くんのを作ったでしょ?
チエさんは、残りの5人分。
プラス、私とチエさんの分。
チエさんはまだ調理中だけど、私は終わった。
・・・ナポリタン、どうすればいい、?
いや、出せばいいのはわかってるんだけど、
なんか、こう、他のみんなはまだなのに、みたいな、、
ううん、冷めちゃうし、早く持っていかなきゃだ。
コーヒーを片手に、楽しそうに喋っているみんな。
・・・この姿を見ているのは、私だけなんだ、
見た目は、よし。
ゆっくりお皿をテーブルに置き、私はまた厨房へ戻る。
・・・作らないけど、この空間にはいられないよ、
隣の椅子を引く亜嵐くん。
え、え、え?
と、隣!? 座れって!?
無理無理っ!!
うわぁ、さっき嘘つけばよかったぁっ!
どうしよう、どうすればいい、!?
チエさん!助けてぇ!
待って、チエさん、神。
2回に渡って、ご飯を運び、
私も座るね、って、亜嵐くんの隣に座った。
私はチエさんの横に座る。
・・・・・亜嵐くんの隣、回避成功。
チエさん、ありがとうございました。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!