第8話

ドキドキ
727
2020/06/24 06:49
あなた

し、失礼します、っ、

ぶるぶると震える手で、ゆっくりゆっくりお水を運んだ。
亜嵐くん達の方は意地でも見ないで、下を向いて歩く。
涙が出ないようにぎゅっと唇を噛んで我慢して、
ファンだってことをバレないように頑張った。

これはチエさんの助言で、
ファンとしてじゃなくて、1人の人間として接してもらえる機会は、きっともうないよ。
って言われたから。

確かに、って、すぐ頷いて、感謝の言葉を並べる。

気づかれてないかな、、私、大丈夫かな。




自分の手だけに集中し、優しく七つのコップを置く。
涼太
涼太
ありがとう(笑)
あぁ待って、
ほんとにダメだ私。
もう無理だよ、、
目に涙が浮かんでくる。
やばい、泣きたくないのに、っ、






あなた

は、は、初めまして、っ、!、



涙を戻すように言った挨拶だけど、、私のバカっ!!
いくらなんでも詰まりすぎでしょっ、!
あなた

ここで、働いています、、野々村あなたと申します、っ、!



・・・あれ、、自己紹介って何言うんだっけ、?
あなた

よ、よろしくお願いします、っ、

ちょっと頭を下げて、すぐに戻ろうとした時。
亜嵐
亜嵐
あなたちゃんっ!
・・・あらん、、くん、?


・・・今、、私の名前を呼んだ、、、?
・・・あなた、、ちゃん、、



反射的に亜嵐くんの方を向いてしまった私。


・・・やっちゃった、、

思いっきり涙が流れてる私の顔。
驚いた顔をしているみんなを見て、すぐに拭いた。
また俯いて返事をする。
あなた

・・・はいっ、

亜嵐
亜嵐
なんて呼べばいいか聞こうと思ったんだけど、、、大丈夫、?
あなた

大丈夫、です、っ、(泣)

あなた

・・・なんでもいいですよっ、

まだ目元がうるうるしてる私を見て、みんな困っている様子。


亜嵐くんを困らせることだけはしたくないよ、


涙を拭き取りながら、大股で奥へ戻る。

私には、後悔しかなかった。

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