ぶるぶると震える手で、ゆっくりゆっくりお水を運んだ。
亜嵐くん達の方は意地でも見ないで、下を向いて歩く。
涙が出ないようにぎゅっと唇を噛んで我慢して、
ファンだってことをバレないように頑張った。
これはチエさんの助言で、
ファンとしてじゃなくて、1人の人間として接してもらえる機会は、きっともうないよ。
って言われたから。
確かに、って、すぐ頷いて、感謝の言葉を並べる。
気づかれてないかな、、私、大丈夫かな。
自分の手だけに集中し、優しく七つのコップを置く。
あぁ待って、
ほんとにダメだ私。
もう無理だよ、、
目に涙が浮かんでくる。
やばい、泣きたくないのに、っ、
涙を戻すように言った挨拶だけど、、私のバカっ!!
いくらなんでも詰まりすぎでしょっ、!
・・・あれ、、自己紹介って何言うんだっけ、?
ちょっと頭を下げて、すぐに戻ろうとした時。
・・・あらん、、くん、?
・・・今、、私の名前を呼んだ、、、?
・・・あなた、、ちゃん、、
反射的に亜嵐くんの方を向いてしまった私。
・・・やっちゃった、、
思いっきり涙が流れてる私の顔。
驚いた顔をしているみんなを見て、すぐに拭いた。
また俯いて返事をする。
まだ目元がうるうるしてる私を見て、みんな困っている様子。
亜嵐くんを困らせることだけはしたくないよ、
涙を拭き取りながら、大股で奥へ戻る。
私には、後悔しかなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。