コツ...コツ...コツ
静かな洞窟に私の足音が響く
ハクやキジャたちは大丈夫だろうけど、ユンは暗闇は平気かな...と、ふと心配になる。
試練とは、どんなことをするのだろう
トラウマを克服すること。
現時点ではそれしか分かっていない。
しかしそれはどうやって克服するのか。私自身のトラウマはなんなのか。
うすうす分かってはいるけど、思い出すだけでまだ胸が痛い。なるべく思い出したくはない。
カツン...
歩いていると、洞窟に響く音が先程より高くなったことが感じ取れた。
嫌な予感がした。
しかしそこから動かないということには何も始まらないと思い、また歩みを進めた
1歩足を前に出すと、目の前の景色が一気に変わった
眩い光に思わず目を潜ませる。
光が収まる頃合いをみてめを開ける
そこは...
ここは緋龍城の入口だ。
なぜこんな所に...
遠くから聞こえる声がどんどん近づいてくるのを感じ、すぐ近くの低木に隠れる
ハクは私のいる木の影の方を向きそう声をかけた
あまりの驚きに体が動かない。
ハクがなぜここにいるのか。現状が理解出来なかった
観念するように、私は木の影から出る。
ハクはそう言うと、私の元へ歩いてきた。
...と思った。
ハクは私を通り過ぎ、ハクがたどり着いた先にいたのは、私の後ろにいたらしい一回り小さい髪の長い頃の私だった
もう何に驚けばいいのかが分からなかった。
ハクが私を通り過ぎたこと。
私がもう一人いること。
そしてその私は昔のような髪の長い時の私。
そして2人には私の声が聞こえていないようだった。そして、姿も認識しているようには見えなかった。
私がハクを呼ぶのと被さるように、後ろから2人を呼ぶ声がした。
何度も聞いたことのある声。その声を聞く度に胸が締め付けられ、心がはずんだ。愛おしかったはずのその声は、今となっては聞けば聞くほど心臓が痛み、苦しくなる。
かつて私が愛していた人の名を、もう1人の私が呼んだ。
もう1人の私が頬を赤らめる。
ハクにキッパリと正論を叩きつけれぷくー、と頬を膨らませる。
スウォンがグイグイとハクを引っ張っていく。
その後ろをもう1人の私がハクに嫉妬してじーっと睨んでいた。
私はこの光景を覚えている。
忘れたかった、私の記憶。スウォンとハクとの、楽しかった3人の思い出。
なんで、この試練は私にこの光景を思い出させたのだろうか...
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。