第135話

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2022/04/01 09:00
(あなたside)



渡辺さんは、あの夜の皆の様子を順を追って話してくれた。



渡辺「それで、あなたからメッセージが送られてきて、それに阿部ちゃんとラウールが縦読みで"たすけて"になることに気付いたんだよね。それと同時にふっかが滝沢くんに連絡してて…。」

『気付いてくれてよかったです。』

渡辺「てか、よく考えたよね。」

『あの時、ナイフで脅されながら送ったんですよね。その時にこの傷ができました。』

渡辺「怖かったよね…。」

『その時は怖いよりも私のせいでデビュー前の皆さんに迷惑をかけないかが心配だったので、なんとか今の状況を知らせなきゃと必死でした。』


だって彼らの狙いは私じゃなくて、SnowManの皆だと思ってたから。

あれだけ送れば、滝沢さんに確認の連絡をしてくれると思ってた。

滝沢さんに連絡がいけば、あの内容が嘘だということがわかるし、"たすけて"のメッセージに気付いてくれれば、私がただならぬ状況であるとうことが伝わると思ったから。




…あぁ、そうだ。






『…滝沢さんから実家のことは聞きましたか?』




私が渡辺さんにそう聞くと、渡辺さんは少しだけ目がピクッと動いた気がした。

そして、少し目を細めながら言った。


渡辺「…実家がないことは聞いた。」

『そうですか…。』


あの時は後先考えずに、とりあえず今の状況を知らせるために送ったし、別に隠したかったわけでもないんだけど、いざ少しでも知られてしまうと、変な気持ちになる。



そんなことを考えていたら、渡辺さんが静かに口を開いた。


渡辺「…ラウールと佐久間が気にしてたよ。」

『え?』

渡辺「あなたの誕生日に、聞いちゃいけないこと聞いたかもって。」

『…。』


そう言えば、誕生日を祝ってもらったあの日、ラウールくんと佐久間さんに両親のことを聞かれたんだっけ?

あのタイミングで両親のことを話したら、空気が重くなることはわかっていたから、慎重に言葉を選びながら話してた気がするな。

滝沢さんがどこまで詳しく言ったかわからないけど、2人がそんなに気にしているのなら、渡辺さんが言ってた以上のことも話しているのかもしれない。


渡辺「だから明日、皆が来たら聞かれると思う。話すかはあなたに任せる。でも2人のことを安心させることができるなら、させてあげて欲しい。」

『渡辺さん…。』


渡辺さんに限ったことじゃないけれど、このSnowManという人達は、本当にメンバーを大切にしているんだというのがすごく伝わってくる。




そして、そう思うたびに、無意識に1歩下がったところから皆を見るようにしてる私がいる。





すると、ちょっと重くなった空気を変えるように、渡辺さんは私の頭をペシッと軽く叩いた。


渡辺「まだ聞きたい?てか、休まなくていい?」

『あ、すごく寝たので目が冴えてて…。』

渡辺「そういえばそうだったな。」

『渡辺さんこそ、眠たくないんですか?』

渡辺「今日はとことんあなたに付き合ってやる。」


何て言いながら、小さくあくびなんてするもんだから、少しだけ笑ってしまった。


『説得力がありませんよ?』


なんて、少しからかうように行ってみたら、渡辺さんは小声で何かを言った。





渡辺「…嫌だから。」

『え?』

渡辺「目が覚めて、またあなたがいなくなってたら嫌だから。」





そう言いながら私を見つめる顔は、ちょっと不安げで。




私は思わず渡辺さんの手を握った。





『でも帰ってきましたよ。最終的に渡辺さんのところに帰ってきたらどうでもいいんじゃないですか?』





私はいつぞや言われたこと渡辺さんに笑いながら言った。

すると、渡辺さんは私の手に一方の手を重ねて、力強くぎゅっと握った。




渡辺「…今回は訳が違うでしょ。俺だけじゃないけど、かなり焦ったんだから。滝沢くんもなかなかあなたのところへ向かおうとしないし、会社の寮の場所も教えてくれないし…。』



そう言いながら、渡辺さんはさっきまでの話の続きをポツポツと話し始めた。




最近設置されたシェアハウスの監視カメラで私が誘拐される場面がバッチリと映っていたこと。

会社の寮の監視カメラの映像と、滝沢さん専用のスマホのGPSから会社の寮に私達がいることがわかったこと。

けれど、滝沢さんはそこまでわかっていながらすぐに動こうとはせずに、そこで渡辺さんが滝沢さんに向かって怒ったそうな。

これがきっと滝沢さんが言っていた、渡辺さんに脅されたことなんだと思う。

でも、それに関しては渡辺さんは軽く触れただけで、詳しくは話してくれなかった。


それから、皆の説得に折れた滝沢さんが会社の寮の場所を教えて、ラウールくん以外の8人で阿部さんが作戦を考えて私を助けに来てくれたようだった。

滝沢さんがすぐに動けなかったのは、深夜の時間帯というのもあり、人を集めるのに時間がかかっていたからだそうだ。



一通り話し終わった後、私はどうしても気になっていることがあった。

けれど、それを聞こうとしたら、私の手を握る力が緩まり、渡辺さんを見てみると、椅子に座ったまま目を閉じていて、小さく寝息を立てていた。



私は自分にかけてあった布団を1枚剥がし、右足首に気を遣いながら渡辺さんにそっとかけた。

そして、サイドテーブルに置いてあった部屋の照明のリモコンに手を伸ばし、照明を落とした。






真っ暗になった部屋で、まだ触れている渡辺さんの手がほんのりあったかくて、久々の感覚にとても安心した。
















あんなに寝ていたのに、私はまた寝ていたようで、パッと目が覚めた。

隣を見てみると、いつの間にかベッドに顔を埋めて寝ている渡辺さんが、私の手を握ったまま寝ていた。



今日のラウールくんが学校に行くまでの時間にはSnowManの皆が来るのなら、身なりを整えておきたいところだ。

だって、今私はまだあの時のヨレヨレのブラウスとスーツのズボンをはいたままで、おそらくお風呂にも入れていない。


なんてことを考えていたら、朝の検診に看護師さんがやって来て、そのことを相談したら笑顔でお手伝いすると言ってくれた。

私は渡辺さんを起こさないように、渡辺さんの手からそっと自分の手を抜き取り、看護師さんに手伝ってもらいながらベッドから降りて、車イスに乗せられて、部屋に併設されている脱衣場に向かった。

点滴の管がまだ刺さったままのため、シャワーを浴びれない代わりに体を拭いてもらい、髪の毛も洗ってもらった。

そして、ここの病院のパジャマに着替えた。


着ていたブラウスとスーツのズボンは汚れや皺がひどくて、なんならズボンに関しては少し破れているところもあった。

退院したらスーツを新調しなきゃな…、あ、そういえば、私が持っていた2台のスマホはどこにあるんだろう。

あと、できれば、SnowManの皆が来てくれるなら、私の仕事用の鞄を持ってきてくれるように、渡辺さんにお願いしてもらおう。





さっぱりして再びベッドがある部屋に戻ってくると、渡辺さんは既に起きていて、焦っている様子でベッドのそばに立っていた。

渡辺さんが私を見つけると、大きく目を見開いて、胸を撫で下ろしていた。










●筆者のぼやき●
中途半端なところで切ってすみません。
急いで清書したので文章おかしい変かも。
更新ものんびりすぎて…まだ読んでる人いるかな(笑)

ブラザービート、無事にフラゲしたんですけど、まだ封を開けておらず…

いつも♥️&💬ありがとうございます!
誤字脱字ありましたらすみません。

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