颯手さんが小さな声で何か言ったが、良く聞こえなかったので、私は瞬きをした。
私と颯手さんのやり取りを聞いていた誉さんは、大人しく座っている男の子に視線を向けると、
と問いかけた。男の子は、私たちの顔を順番に見た後、
と答えた。
変わった名字だと思い、首を傾げる。
品のいいシャツに短パン姿の阿形君の目は小さいが賢そうな光を宿している。もしかすると、良家のお坊ちゃんなのかもしれない。
誉さんが阿形君の目を見つめ問いかけると、阿形君は誉さんを見返し、
と悲しげな表情を浮かべた。
また妙な名前が出てきた。こちらも難読名字なのだろうか。
阿形君の言葉に、
颯手さんが短くつぶやく。阿形君は頷くと、
と話し出した。
人の名前にしては不思議な響きだ。誉さんは首を傾げている私にちらりと目を向けたが、
あえて何も言わず、阿形君に話の続きを促した。
颯手さんが顎に手を当て、考え込んだ。
誉さんが椅子に背を預け、長い脚を組んだ。
私が尋ねると、颯手さんは顎から手を離し「うん」と頷いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。