第12話

一章-12
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2022/05/25 23:00
    *

『Cafe Path』を出た私と誉さんは、連れ立って『哲学の道』を歩いていた。阿形君はネズミの姿のまま、私の肩の上に乗っている。
水無月愛莉
水無月愛莉
児童公園ってどこにあるんですか?
 誉さんに尋ねると、
神谷誉
神谷誉
銀閣寺の近くだ
 と短い答えが返ってきた。

 私は隣を歩く誉さんの顔を見上げ、気になっていたことを聞いてみた。
水無月愛莉
水無月愛莉
どうして誉さんは阿形君が見えるんですか?
神谷誉
神谷誉
どうしてって……まあ、そういう体質だからだよ
 誉さんはちらりと私を見ると、歯切れ悪く答えた。
水無月愛莉
水無月愛莉
(体質?)
 霊感体質とか、そういうことなのだろうか。
水無月愛莉
水無月愛莉
じゃあ、どうして私は阿形君が見えるんでしょう
 今度は自分のことを聞いてみると、
神谷誉
神谷誉
そりゃ、あんたがそういう体質だからだろ
 さっきと同じような答えが返ってきて、私は口をへの字に曲げた。
水無月愛莉
水無月愛莉
何の説明にもなっていませんよ
神谷誉
神谷誉
そうだな……じゃあ聞くが、あんた、神社の娘なんじゃないか?
 素性を言い当てられて、驚いた。
水無月愛莉
水無月愛莉
確かに、母親の実家が神社ですけど……どうして分かったんですか?
神谷誉
神谷誉
神使しんしが見えるんだ。巫女の資質があるんだろう
 誉さんは、分かって当然と言わんばかりの顔をした。
水無月愛莉
水無月愛莉
神使?
神谷誉
神谷誉
神使というのは、神様のお使いをしている動物たちのことだ。分かりやすいのは、狛犬だな
水無月愛莉
水無月愛莉
巫女は、神社でお守りとか売っている巫女さんのことですよね。あの人たち、皆、神使が見えているんですか?
 彼女たち皆が不思議なものを目にしているとは思えない。
神谷誉
神谷誉
いいや。俺が言っているのは、シャーマン的な意味での巫女だ。巫女は、大昔、神様を体に降ろして、神託をしたり口寄せをしたりしていたんだよ。あんたには、そういう意味での巫女の資質があるということだ
 誉さんの説明に、私はますますびっくりしてしまった。
水無月愛莉
水無月愛莉
でも今まで一度も、神様に乗り移られたことも、神使を見たこともありませんよ
神谷誉
神谷誉
なら、神様の方から、あんたに神使を見せているのかもな
水無月愛莉
水無月愛莉
どういうことですか?
 誉さんの言う意味がよく分からなくて、首を傾げたら、
神谷誉
神谷誉
神様の方にあんたを必要としている理由があるのかもしれない
 誉さんは顎に手を置き、考え込むように続けた。
水無月愛莉
水無月愛莉
それって、どんな理由なんでしょうか?
神谷誉
神谷誉
それは俺には分からない。ただ一つ言えることは、あんたが俺に声をかけなかったら、俺は阿形の頼みを聞いていなかったということだ
 まるで「卵が先か、鶏が先か」のような話になってきて、頭が混乱してくる。
水無月愛莉
水無月愛莉
(訳が分からなくなってきたから、一旦考えるのをやめよう……)

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