暗闇の中、一紗の顔がぼんやりと浮かび上がる。表情は見えない。
いつもどうりを装ってるけど、、
実はめちゃくちゃドキドキしてる。
元彼と映画を見た時よりドキドキしてる。
なんで....?
一紗が、私の顔を覗き込んでくる。
ドキドキしてる。
心臓が鳴り止まない。とか、相手に聞こえてしまいそう。とかが、どれほど適切なのか思い知らされた。
あぁ、、「うん。」ってたった2文字言ってしまえばどんなに楽か。
ともきが好きなのに。。。
私はそんな事を考えてしまった。
いや、
考えてしまった。と言うよりは、
思ってしまった。の方が適切だろう。
そんな感情で心はいっぱいだった。
振り絞った、小さな声で私は言った。
顔が見れない。
この空気に耐えられなくて私は立ち上がった。
部室の鍵をとり、一紗に渡す。
一紗に渡す時、手を掴まれた。
こちらを見る。
私がどんな顔してたか分からない。
数秒見つめ合い、一紗が手を離した。
一紗が告ってきたのに、私から手を離さなかった......
離せなかった。
心のどこか奥で、離さないでって言ってた。
無言で私は部室を出た。
外は春の夜なので、ひんやりと冷たい風邪が私の頬を撫でる。
心の中がぐちゃぐちゃだ。
まるで、卵を潰した御月見うどんみたい。
今、たった今 起きたことが信じられない。
自分の愚かさにも気づいてしまった。
なんて、自己中心的なんだろう。
なんて、私は最低なんだろう。
なんで、人間はこんなにも醜いのだろうか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。