ポートマフィアside
探偵社が会議をしていた頃と同時刻、ポートマフィアも五大幹部と首領が集まっていた。
いつもは自由に過ごしている面々が、今回はピリピリとした空気を放っていた。
「みんなに集まって貰ったのは他でもない。」
重い沈黙を破り、首領「森鴎外」が口を開いた。
五大幹部は空気を張り詰めて鴎外を見た。
「昨日、ヨコハマに来た黒龍を排除する為だ。」
鴎外は皆を一瞥し…
「いいかい?ヨコハマを害虫から守るんだ。」
「仰せのままに」
-それから数時間した夕暮れ時に五大幹部の1人「中原中也」がヨコハマの街を歩いていた。黒龍の被害が無いかを見る為だった。その時、何処からか澄んだ美しい歌声が聞こえてきた。
「なんだ…?誰か居んのか?」
中也は歌声のする方へ恐る恐る向かった。視界が開けた瞬間…強い風が一瞬吹いた。反射的に中也は顔を隠した。風が止み、顔を上げるとそこには歌声の主がいた。
天使の様に真っ白な美しい髪をたなびかせ、美しい歌声で歌っていた。後ろ姿から分かる程、彼女は美しかった。
「…手前…誰だ」
彼女に見入りながらも中也は声をかけた。少女は歌うのを辞めゆっくりと振り向いた。
「!(なんだ…此奴)」
彼女は…この世のものとは思えない程の美しさを放っていた。だが、彼女の瞳の奥には闇の様な色が潜んでいた。中也ならば気づけたであろう。だが、そんな事など気にならない程に彼女は美しかった。天使とは女神とは…彼女の事を云うのではないだろうか……
「……あなたは…誰ですか…」
高すぎない澄んだ声は中也の耳には届かなかった。強く吹いた風が彼女の声と姿を隠したからだ…。
「なっ…彼奴は…どこだ?!」
風が止むと其処には中也しか居なかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。