ホテルを出たあと、僕は先ほどの五万を乱雑にポケットへ押し込んだ。空を見上げると、雲ひとつない快晴。けれど、心の中はどんより曇っていた。
「はぁ」
大きく息を吐くと、足を踏み出した。
どうでもよかった。人生など、これっぽっちも期待していなかった。毎日くだらない事ばかり。お金などいらない。必要な分だけを、稼いで食べ物や寝床を得る。それだけのこと。お金は、貪欲な人間が溜め込めばいい。それだけだ。
性行為は嫌いだった。けれど、それが一番手っ取り早かった。とくに、中年の女性は金持ちが多い。声をかければ、必ず成功した。その分、求めてくるものも多くひどく疲れるが。とにかく、性行為は好きじゃないが、生きていくためには必要だったため、我慢した。
そういえば、人生に期待していない、と言ったが、唯一楽しみがひとつある。
それはーー。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。