第3話

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2021/02/06 13:12



ホテルを出たあと、僕は先ほどの五万を乱雑にポケットへ押し込んだ。空を見上げると、雲ひとつない快晴。けれど、心の中はどんより曇っていた。

「はぁ」

大きく息を吐くと、足を踏み出した。

どうでもよかった。人生など、これっぽっちも期待していなかった。毎日くだらない事ばかり。お金などいらない。必要な分だけを、稼いで食べ物や寝床を得る。それだけのこと。お金は、貪欲な人間が溜め込めばいい。それだけだ。

性行為は嫌いだった。けれど、それが一番手っ取り早かった。とくに、中年の女性は金持ちが多い。声をかければ、必ず成功した。その分、求めてくるものも多くひどく疲れるが。とにかく、性行為は好きじゃないが、生きていくためには必要だったため、我慢した。

そういえば、人生に期待していない、と言ったが、唯一楽しみがひとつある。


それはーー。



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