第11話

①①
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2021/02/08 09:49



「……ホテルから出て来たのをたまたま……それに……お金……もらってた。お兄ちゃん、あの人とセックスしたの?」

言葉を失った。
リカは真剣な顔をしていた。僕はなにか言おうとした。けれど、頭が真っ白になってできなかった。もうむりだ。隠していたことがリカにバレてしまった。金で買われる情けない姿をーー。
僕は一度息をした。それから、本当のことを話そうと顔を上げた。

「じつは……」

「セックス……したい」

「え?」

「セックス……お兄ちゃんと、したい」

「な、なにを、」

「お願い……お金なら……あるから」

わけがわからなかった。ほんとうに、わからなかった。リカは引き下がらなかった。どんなに説得しようとしても、顔を縦に振らなかった。
気づけば僕らは近くにあるラブホテルに入っていた。
リカは部屋に入るや否や服を脱ぎ出した。

「ちょ……リカちゃんっ、待って……本気なの?」

「……うん」

「な、なんで、ぼ、僕は、君を」

「私ね。もうすぐ死ぬの」

「え?」

「死ぬ前に一度くらいセックスっていうの……してみたかった。だから……お願い」

「……そんな」

もうすぐ死ぬ? そんなことって……。
僕はリカのことをなにも知らなかった。知ろうとしなかった。怖かったのだ。嫌われるのが。
そんな彼女が今僕を求めている。僕の本当の姿を知ってもなおーー。


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