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第15話

十五
56
2018/02/21 22:39
私は大量の資料とプリントやノート、台本を
抱えて放課後の教室に残っていた。

「早く終わらせないと……」

焦ってもほとんど終わっていない
山積みの物達にため息をつきながら、
美術部の子に頼まれたポスターに取り掛かろうとしていた。

絵の具や色鉛筆、筆などの画材を用意して、
ポスター用の模造紙を広げる。
広げるだけでも一苦労だ。




____あれ?



「何で……終わってるの?」

まだ鉛筆の線の下書きしか無いはずの
模造紙には綺麗に色がつけられていて、
提出しても何の問題もない作品に仕上がっていた。


「ごめんね?勝手に描いちゃって」

呆然としている私の背後から、
柔らかくて落ち着いた声がかかる。

「それに色つけたの、私だよ」

声の主は、ほとんど話したことがなく、なにか私に頼んだこともない書道部の女の子だった。

私が何事かと分からず頭が混乱しているうちに彼女は続ける。

「相原さん、凄く大変そうだったから。いろんな仕事任されて、部活の手伝いとかもしてて。私も手伝いたかったんだ


____大丈夫って言ってたけど、大丈夫じゃなかったでしょ? 」


大丈夫……じゃない……?

そこで思考が止まる。

大丈夫じゃなくなんかない。
私は大丈夫。

「あ、あの……」

彼女はふわふわした髪をなびかせながら私の声に耳を傾ける。

「私は……大丈夫…………」

大丈夫。
私は要領がよくて、苦手なものなんてないから。
大丈夫。



「うーん、少なくとも
大丈夫じゃなさそうな顔、してるよ?
無理しなくたっていいんだよ」

彼女は微笑みながら言う。






「......っ...」

彼女の声に安心したのか、
私は泣いていた。

「えっどうしたの!?落ち着いて!?」







「......っ......ありがとう......」


しゃくりごえになりながら彼女にお礼を言う











私は、全然大丈夫じゃなかったんだ。





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