【家《玄関》】
ああ、またこのパターン…千晴、もう言いつけたのか。
そもそも、私はアイツを傷付けたことなんかない。
あっちが勝手にやってることなのに。
そもそも、幼馴染みってだけで友達でもない。
このやり取りももう慣れた。
母は、いつも千晴の味方をする。
私が何を言っても、嘘だと決めつける。
ふと、そんな疑問が頭に浮かんだ。
確か、二年前だったっけ?
毎日のように言いつけられてたから、その分まともにご飯なんか食べれてない。
この間は、いつも残飯とかを漁ってた。
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【家《自室》】
何で、私の周りはいつもこうなんだろう。
いっその事、この世から消えてしまいたい。
生きているのだって、嫌で仕方がない。
そうだ、私が死んでも悲しむ人なんかいない。
私には、そもそも父がいない。
私が幼い頃、殉職したから。
千晴は、私が死んだら喜びそう。
母さんは、特に何にも感じないだろうな。
そうなれば、すぐ準備しようかな。
まあ、持ってくものなんかないけどさ。
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【家《玄関》】
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。