第10話

#9-side story-
161
2021/02/27 16:23
真冬
真冬
こんなところか……
僕の名前は相川真冬。
一応、高校二年生に当たる年齢だけど、少し事情があり、学校には通っていない。
そして今は、飲み物を切らしていたため、近くのショッピングモールに買い出しに来ていた。
真冬
真冬
さっさと帰って作業の続きを……
真冬
真冬
……?
彼方
彼方
次どこ行く?
真冬
真冬
……あれ、そらるさん?
そらるさんがここに来てるなんて珍しい。
引きこもりのくせに。
……まあ、僕も人の事言えないけど。
彼方
彼方
あ、まふ
僕に気が付いたらしいそらるさんは、軽く手をあげて挨拶を返してくる。
素っ気なく塩っぽい対応だが、そらるさんにとっては、これがいつもの事なのだ。
真冬
真冬
こんな時間に何やってるんですか?
真冬
真冬
それに、そっちの子……
you
you
ふと、先程から気になっている人物へと視線を移す。
そらるさんの横に立つ少女は、誰が見ても美しいと評するであろう見た目をしていた。
長いストレートロングの黒髪に、金色に輝く瞳。
そして、何故か少しだけ濡れている制服に、目の前の少女のものにしてはかなり大きめのパーカー。
何もかもが、美しく、なにより儚く見えてしまう。
真冬
真冬
……
you
you
……あの?
真冬
真冬
俺は、少女に声をかけられるまでボーッとしていた。
正確には、少女に見惚れていたのである。
さきほどから、心臓がうるさいくらいに波打っている。
この気持ちは一体、何なんだろうか……?
you
you
あなたは、彼方の知り合いですか?
彼方……
そらるさんの本名、久しぶりに聞いたかも。
皆、そらるさんの事本名で呼ばないし。
この子、そらるさんの事を本名で呼んでるのか。
なんだか、すごくモヤモヤする……
真冬
真冬
あ、はい
真冬
真冬
僕は、相川真冬って言います
you
you
……よろしくお願いします
少女は、控えめに挨拶を返してくれた。
昔の僕に少しだけ似ているのは気のせいだろうか?
でも、こんな少女がそらるさんと一緒に出歩いているって事は、まさか……
真冬
真冬
でも……
you
you
真冬
真冬
……そらるさん、誘拐はダメですよ?
そらるさん、誘拐したんだろうか?
だって、この時間帯(朝)に少しだけ服が濡れている少女を連れて歩いているんだよ?
誰だって誘拐を疑うはずだ。
彼方
彼方
いや、してねぇし
彼方
彼方
コイツは、学校の後輩だから
学校の後輩でも、誘拐したなら同じだ。
誘拐の有無に、年齢なんて関係ないんだから。
でも、そらるさんが誘拐かぁ……
まーしぃとかならしそうなんだけどな……(失礼)
彼方
彼方
今は俺の家に住んでるけど
へぇ、そらるさんの家に……
……って、は!?
そらるさんの家に、この子が住んでる!?
本当に誘拐したんですか、そらるさん!?
真冬
真冬
え、一緒に住んでるんですか!?
you
you
ま、まあ……
え、すごく嫌な気持ち……
何なの、さっきから……
……もしかして僕、恋に落ちちゃった?
こんなこと、今まで一度もなかったのに……
真冬
真冬
そらるさんばっかり、ズルい……
you
you
……あの、何か言いました?
……って、つい口に出しちゃったよ!
はぁ、何言ってんだろ、僕……
でも、決めたからには必ず貫き通す。
僕は、目の前の少女に恋に落ちた。
そらるさんには、何があっても絶対渡さない。
僕はその決意を悟られないように、出来るだけ感情を押し殺して会話を続けた。
真冬
真冬
いえ、何も?
真冬
真冬
それじゃ、僕はもう行きますね?
僕は、すぐにこの場から立ち去ることにした。
ずっとここにいたら、気が狂ってしまいそうだから。
彼方
彼方
ああ
you
you
では……(_ _*))
一瞬そらるさんの視線が鋭くなったのは、きっと気のせいではないだろう。
きっと、そらるさんも目の前の少女が好きなのだろう。
そして、僕のこの気持ちもバレているのだろう。
僕はその視線をライバルとしての挑戦状と受け取り、返すように鋭い視線を送り返した。

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