見覚えのある日本家屋…その門を潜り庭の離れにある蔵の扉を開く。少し埃臭く眉をしかめるがあなたは迷わず地下牢に続く鉄の扉を開けた。
かつての記憶が蘇る。足の震えを誤魔化すように目的の物がある所を目指す。
そんなあなたを見ていた五条が口を開く。
わざとらしくそう言って五条があなたの小さな手をとった。その行動にあなたはふと頬を緩ませた。
いつの間にか震えは止まっていた。
忘れることはできなくとも、怖がる必要は無い。だって今は幸せだから。幸せという感情を抱かしてくれた五条には感謝してもしきれない。
何故か恋人繋ぎになっていたが別に嫌ではなかったのでそのまま暗い廊下を二人で歩いた。
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少し周りと色が違う壁を壊す。
ポロリと小さな鉄の塊のようなものがあなたの足元に落ちる。あなたはそれを拾い上げて手のひらに置いた。
あなたの手のひらの上にのせられたのは、鍵だった。
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あなたの説明に驚きつい大きな声をあげる。
つまりはこういうことだ、あなたは9歳の時に両親と兄を事故で亡くし1人だけ生き残った。あなたは結構有名な天祥家の娘で特殊な能力を持つことがバレて攫われた。そしてその時持っていた家の鍵を壁に隠した。
家族との思い出がある場所だ、今すぐ帰りたいに決まっている。そう思いあなたに問いかける。
眉を下げながらそう言う彼女に少し腹が立った。なぜ頼ってくれないのか?なぜ気持ちを押し止めるのか?そんな疑問が五条の頭の中ぐるぐると駆け回る。気づけば蔵をでて眩い光が二人を照らしていた。少し前を歩くあなたの手を五条は掴んだ。
五条の真剣な顔にあなたは息を飲む。
あなたは五条の優しさに溺れてしまうのではないかと恐れていた。これ以上優しくされると壊れてしまうような、よく分からない感情に支配されてしまうような…そんな気がしていたのだ。それでもその優しさを向けられるとあなたはどうしようもなく甘えてしまう。泣きそうになりながらも五条の言葉にこくりと頷いた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。