第22話

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2020/11/23 12:38
やばい奴
イケない子にはお仕置だ…私がいいと言うまでここで反省しておきなさい
そう言われ暗くて広いコンクリートで囲まれた部屋に押し込まれる。ガチャりと鍵を賭けられる音を聞きながら部屋の奥から感じる異質な気配に息を飲む。
呪霊
呪霊
アガァ…ア゛ァア゛オ゛ォ
部屋の奥からゆらゆらと姿を現す異質な存在にあなたはビクッと肩を跳ねさせる。
逃げないと…!と異質な化け物から距離をとる。小さな体では思ったように走れない。
逃げて逃げて逃げて逃げて…しかしコンクリートで塗り固められた広い部屋には逃げるところなど無い。あなたが逃げるために走り出すと呪霊はすごい勢いで追ってくる。
逃げられない…あなたは呪霊に向かって手のひらを向ける。
あなたの手が呪霊に触れる。
その瞬間あなたの目の前の呪霊は弾け飛んだ。
夢主
ひっ…嫌だ…こんな…こんな力っ!
触れたものを壊す…そんな力を持っているせいで両親は死んでしまったのだろうか?こんな力持っていなかったらこんな所には来なくて済んだのかもしれない。全部全部全部全部…私のせいなのだ。
夢主
…何も感じなければいい…そうすれば悲しくて泣くことも無い…誰かを傷付けることだって…無くなる…よね?
日々、呪霊が強くなっていく。
殺すことに躊躇えば逆に殺される。
呪霊といえど殺すときに感じる壊す感触、あなたはそれが大嫌いだった。
見たくもない誰かの記憶が頭の中に流れ込む感覚も眼を使った時の空間の冷たさも全部嫌いだった。

14歳の誕生日…戦闘をするとき彼女は優しさを感情の中から消し去った。格段に身体能力が上がる。呪霊でさえ殺すのに躊躇っていたあなたはもう居ない。代わりに…殺戮を楽しむ悪魔が居る。
生き延びる。守る。殺す。守る。
感情を切り替え呪霊を殺す。狂気じみた笑みを浮かべコンクリートで囲まれた部屋を真っ赤に染めていく。あなたの精神はとっくの昔に崩れていた。

呪詛師と接する時は二つに分けた感情を上手い具合に混ぜて、私の他に攫われてきた子供たちと接する時は切り離した優しさを、殺す時は楽しんで…。
そうするうちにあなたは戦い方を覚えた。
しかし今、あなたは二つに分けた感情のひとつを制御できないでいる。呪霊と対峙すれば自然と殺戮を楽しもうとする。抑え込むので精一杯になることだって多々あった。

二人の最強があなたを救いに来てからだ。その前までは感情の入れ替えができていた。あなたは幸せを知った。知ってしまった。分けた感情は簡単に戻ってくれず、あなたはただただ困惑するしか無かった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
大方のことを五条に話終えるとあなたは一言ごめんなさい…と呟いた。
五条
五条
何謝ってんだよ…別にあなたってことには変わりないんだし、いいじゃん?
そう言い聞かせるように言葉を紡ぎながら五条はあなたを抱きしめる。
苦しくないように優しく、それでいて強く抱きしめた。
夢主
こんな私でも…幸せになっていいんですか?
そう言って涙を流すあなたを五条は一層強く抱きしめる。
五条
五条
いいに決まってんだろ…幸せになれなきゃ俺が呪ってやる
夢主
それは…怖いですね
あなたはまだ鼻を鳴らしているが泣き止んだのか五条の胸の中でくすくすと笑う。そんなあなたにつられて五条も口元を綻ばせた。

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