第5話

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2020/11/06 21:37
2人で敵を払いながら奥へと進む。
すると微かな気配がとんでもない速さで近づいてくる。戦闘態勢に入るまもなく天井から術の気配の主が現れた。グレーの少しウェーブのかかったロングの髪と目隠しでおおわれて見えない瞳、そして白い玉のような肌を持つ美しい容姿をした女の首には似つかわしくない首輪と鎖がついていた。
歳も近いのだろうか、身長は平均より小さいが顔が大人びているのか幼くは見えない。彼女はきょろきょろと隠された見えているのか分からない目で周りを見渡し周りに転がる死体に目もくれず口を開いた。
夢主
…殺します…ね?
それはほんの一瞬のことだった。彼女が口を開いて言葉を発した後…彼女の気配が消えたかと思うと、一瞬で背後に現れた。何が起こったのかもわからぬまま後ろを振り向き警戒する。
彼女は警戒するこちらに目もくれず、表情のない顔で鈴を転がしたような可憐な声で言葉を紡ぐ。
夢主
思ったより…弱いです?
そう言うと彼女はまた消えた。
術の気を探りながら探すが上手くいかない。
じゃらりと鎖が蠢く音がしたかと思うと下腹部に重い痛みが響く。何が起こったのか理解する頃には壁にたたきつけられていた。
五条
五条
速すぎだろッ…
そう言いながら彼女に向き直る。
術を使っていないのだろう、術を使った形跡もとい残穢は見られない。つまりこの少女は、自身の脚力だけで目に止まらぬ早さで動いていることになる。
あんな細い体にこんな力があるとは思えないが、事実なのだから仕方がない。
術式を使い応戦する。
幾分か戦いやすくなるが、それでも彼女を止められない。最強の力ですら彼女の前ではただの力に成り果ててしまっている。室内戦はあまり得意では無いのでやっとの思いで少女をを外に吹っ飛ばす。
女といえど苦戦している状況なので本気で吹っ飛ばしたが少女は完璧な受身を取り無傷だった。
月を後ろに屋根に立つ少女の姿に一瞬見惚れるが、すぐに我に返る。
五条
五条
息一つ切らしてないとか…はぁっ…
バケモンかよッ!
夏油
夏油
本当にね…っ…
こちらは息があがり肩を揺らしているが、屋根の上に立つ少女は息切れひとつしていない。
そんな彼女の眉がぴくりと動いた。その途端少女はその場に崩れこんでしまう。
そんな彼女が口を開き、言葉を紡ぐ。
夢主
五条 悟…夏油傑…最強の呪詛師?
私を…子供たちを…救える?
呪術…高専…
月のような少女は知らないはずの名前を口にした。
それがなぜなのかと思うより前に、今、目の前の少女は助けを求めたことに疑問を抱く。この月のような少女は俺たちに、自分達を救えるのかと聞いたのだ。

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