ちゅんちゅんと小鳥が鳴く声が聞こえる。
なんだが懐がすごく暖かい…浮上していく意識の中ふと昨日のことを思い出す。
目の前には五条の腕を枕にして眠るあなたがいた。昨日布団の中で争っているうちに眠ってしまったのだ。規則正しい呼吸をする度に年齢にしては大きな胸が上下に動く。あなたを起こさないように小さな声で抑えきれなかった言葉を口に出した。
しばらく眺めていると、あなたは眉をしかめながら五条の胸に頬を擦り寄せ抱きついてきた。その行動に五条は一瞬息をするのも忘れフリーズする。
誰に話しかけているのか…そう言った五条は手で顔を隠している。おい五条 悟…写真は撮らんのか?
長い腕を伸ばし枕元の携帯を取って五条はあなたの寝顔を連写した。
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あなたの寝顔を眺めること10分、寝顔を見られていたと気づいたあなたに部屋から追い出され弘羽に保護された五条は真剣な顔で礼を述べた。そして確信犯である弘羽は親指を立てた。
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少し怒気をまとった声、錆び付いたおもちゃのように首を後ろに回す。
冷や汗が頬を伝う感覚に息を飲む。
言い訳を即席で考え、早口になりながらそう言っている途中、異変に気がついた。
そう呼びかければ顔を赤らめたあなたが口を開いた。
そう言いながらあなたは弘羽の肩をべしべしと叩く。結構痛い。
問おうとした言葉を遮るようにあなたの手刀が飛んでくる。なんてことだ…両片思いではないか、と弘羽はあなたの手刀がクリティカルヒットしジンジンと痛む頭を抱えた。
涙目になりながらそう言うあなたは恋(心臓病)に悩む少女そのものだった。
優しく諭すようにそう言えばあなたの顔はみるみるうちに赤く染まり、首元まで真っ赤になっていった。
しゅんと小さな声でそう言ったあなたの頭を弘羽は撫でながら口を開く。
そう言い切る前にあなたはジトっとした目で弘羽を睨みつけ(鳩尾にパンチをして)部屋に戻っていった。
殴られたところがすごい痛い。しかし本当に好きなのだろう。鳩尾の痛みに顔を蒼白させながら弘羽は微笑む。遠くなっていくあなたの耳元が赤く染っている。きっと自分でもわかっているのだろう。
だって五条悟はあなたの事を本当に愛してくれていますから。私はしばらくあなた達の恋の行く末を見守らせてもらいますね?
弘羽はそう遠くないであろう未来に期待しながら遠ざかっていくあなたの背中に微笑み床に倒れ込んだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。