ふたりはドアを開け、
出ていった。
ふたりが帰った後の病室はすごく静かで、
寂しかった。
頭の中ではまだテオくんが笑ってる。
まだ記憶もないのに、なぜか。
そんなに眠くなかった。
だけど、することもないから俺は寝た。
俺はまた同じ花畑にいた。
前と同じですごく綺麗だ。
だけど、
前と違うとこがあった。
テオくんがいなかった。
どこだろう?
ガラスの壁すらない。
そしたらドアを見つけた。
ガチャ
周りが光り輝いて目を開けてられなかった。
目を開けた頃には光はもうなかった。
そこに広がっていた光景は────
ふたりがカメラに向かって喋っていた。
テオくんが企画を持ってきて、
俺が拍手をしている。
そう、
スカイピースの活動をしていた。
涙が出た。
あの頃の俺は、
こんなに笑顔だったんだ。
この頃のテオくんは、
こんなに笑顔だったんだ。
スカイピースはすごく輝いていた。
俺は話しかけるのをやめた。
ここで話しかけてしまってはなにかが壊れる。
そんな気がした。
テオくんはドアを開け、
他の部屋へと移った。
涙は止まらない。
顔をあげたら夢の中の俺が喋っていた。
すごくマヌケな声が出た。
涙が余計に出た。
目の前がぼやけた。
彼はなにもかも知ってるかのように俺に言った。
ああ、そうだ。
ずっと逃げてたんだ。
俺はテオくんが好き。大好き。
それも恋愛の好き。
その想いに気付きたくなくて逃げてきた。
嫌われるのが怖かった。
失うのを恐れていた。
壊れるのが嫌だった。
そんな気持ちで大切な人の記憶まで隠してしまった。
早く夢からさめて伝えなきゃ。
大切な人へ────
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。