彼に出会ったのは必然的でした
私が夜の海に来たのは今日こそ
海を、月を星の本物の色を見たくて
次の作品展に飾る最後の絵の夜の海が
どうしても描けなくて 輝いていなくて
皆の期待が恐ろしくなって逃げてきただけで
じーっと夜空と海の僅かな境目を
キラキラと瞬く星を見ていた時
不意に横を向くと
見計らったかのように強い風が吹いてきて
私は目を瞑りました
…十数秒ほどたった時、目を開けると
横に人がいたので話しかけてみました
『ねぇ、お兄さん』
そう呼ぶと彼はゆっくりと目を開けました
「まあ…!」
彼の瞳を見た一瞬だけ、
私は星の呼吸が海の深さが
全ての色が見えた気がしました。
これが本物の色…ずっと探し求めてた色
瞳に目を奪われていたけどよく見ると
彼はきれいな人で、
サラサラの短い髪の間から見えるピアス
高身長で長い手足に小さな顔
正にモデル体型…と言うに等しい彼は
呼吸も忘れそうな程呆然とこちらを見ていた
私は『あの…?』と何度か声をかけたけど
私の声は聞こえていないようで、
「き…ぃだ…ぅっ…ぃ…」
聞き取れなかったけどずっと何か呟いていた
ずっと無視された私は我慢の限界がきて
『お兄さんっ!!』
と人生で1番大きな声じゃないか…
なんて思うくらい大きな声で彼を呼んだ
「すみません!つい見とれていたのもで…」
『うふふ、ありがとうございます。』
彼の返事を聞くと
嬉しくてついにやけながら答えてしまった
暫しの沈黙があった後、
私はまた彼に『お兄さん』と声をかけた
『お兄さんの瞳は
とっても綺麗な色が見えるわ…
まるでダイヤみたいにキラキラしてるの
きっと明るい色なのね』
「えっ!そ、そのあのー、えーっと…
あ、ありがとうございます!!」
褒められるのに慣れていなそうな彼は
戸惑いを隠そうとするもあたふたするだけで
きっととても恥ずかしいのだろう
耳まで真っ赤になっていた
一瞬見えた彼の色は あお色
きっと彼の瞳はあお色なんだろう
海のあお 空のあお 今とても絵が描きたい
スケッチブックを持ってくればよかった
出る直前にやっぱり要らないと思って
置いてきてしまった…
彼の美しい瞳は
光の加減で様々に光るようで、
何にでも見える瞳は
まるで本当の自然の様だった
そうだ。そうだった。
自然はいつも生きているんだ。
海も空も星も月も草も
皆息をして生きていたんだった
なんて改めて感じて感動していると
「貴女も私と同じ色の瞳を持っていますね」
『えっ……』
私の…瞳?お兄さんと一緒…?
そうか、そうなのか、私の瞳は!
「あー、えっとごめんね?嫌だった…かな?」
『いえ…すいません。違うんです…ありがとうございます。あの、もっとお話しませんか?』
「えぇ、是非。あ、でももう日の出ですよ。」
『あ、ほんとだ…』
お母様にまた怒られちゃうな…
きっと今頃メイド長は
門の掃除をしながら私を待っているのだろう
二人で考える中、
先に口を開いたのは私だった
『明日、ここで彼は誰時に会いましょう』
そう告げて私は足早に去った
後ろで「かはたれどき…?」
と聞こえた様な気がしたけど、
私は振り返らずに浜辺を歩いて帰りました
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。