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『うっ、、、さむ』
前回の撮影から一週間がたっても
相変わらずの冬。。
今日は花火大会のシーンの撮影です
『忘れたくないよ…、』
手を温めながら、ぽつりとつぶやく。
真織が初めて透の前で涙を見せるところ。
自分のことを言いたいのに
言えなくて
でももしかしたら
透は自分のことについて理解しているのかも
という期待と不安が入り混じったとても難しいシーン。
ちらりと横を見ると
道枝さんは手に湯気が立つコーヒーを持ちながら
台本に目を通している
白くて、細くて、
まさに儚いという言葉が似合う人。
きっと彼の美貌も
その言葉の原因の一つなんだろう。
ジーッと彼を見つめていると、
道枝「…、?(にこ)」
不自然に思われたのか顔を上げて微笑まれた。
邪魔しちゃったかな。
今着ているベンチコートの下には浴衣を着ていて
道枝さんも男物の着物を着ている。
冬に着物を着ている、、なんていう不自然なことでも
学生生活を全て演技に捧げた身としては着物を着ているだけでテンションはあがるものだ。
高校生のときに彼氏がいて
花火大会に来ていたら。。とか
まあ誰もが憧れるシチュエーションだろうし。
監督 「撮影始めま〜す!!」
花火を見上げている、という状況を作るために
大きなパネルを見つめる
冷えた空気の中、
真織という人物を自分に落とし込む
道枝さん、
いや、透と繋いでいる手の平は
とても暖かくて
自分が納得の行く画が撮れるまで
透は手を繋いでいてくれた。
真織という一人の少女と。
泣きすぎて目がパンパンだ。
道枝 「っ、藤元さん。」
泣いたあとのぼーっとした頭のまま
次のシーンまでの間を過ごしていた。
駆け寄ってきてくれた道枝さんの手には
コーヒーとココアが。
前にココアがケータリングにあることを教えてもらってから
ココアが私のお気に入りなことを知っていたみたいだ。
道枝 「飲みません?寒いから、。笑」
『有難うございます、笑』
道枝さんからココアを受け取り
一口を口に含む
道枝 「…おれ、藤元さんと演技できて良かったです。」
『、え、?』
急に告げられた一言に思わず反応してしまう。
道枝 「藤元さんが真剣に、日野真織として演技に向き合っているのがすごくかっこよくて。俺も、もっと透のこと理解しなきゃ、って思えたんです。
…初めての主演映画の相手が
藤元さんでよかった。」
素直に自分に向けられた言葉が凄く嬉しくて。
『私も、
透が道枝さんでよかった。』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。