――次の日から、神谷がなぜか私と距離を置くようになった。
「おはよー」
「……はよ」
挨拶しても、こっちをちらっと見てそう言うくらい。
私を使うこともせず、故に話すこともない。
……変だ。明らかに。
まぁ避けられるようになって今日で三日目だし、三日坊主ってことわざもあるからそろそろ戻るんじゃないかな。
「赤城さん」
机に頬杖をついて神谷を眺めていた私に、誰かが声をかけてきた。
視線を上げると、声の主が分かった。
「同じ委員会の……えっと、業平(なりひら)くん」
「今日さ、放課後時間ある?」
「放課後?うん、大丈夫だよ」
「じゃあさ、放課後になったら、校舎裏に来てくれる?話したいことがあるんだ」
「分かった」
ニコッと笑いかけて、教室を去っていく業平くんに軽く手を振る。
んー……告白っぽいな。なんでか知らないけどたまにされるんだよね。もちろん気持ちは嬉しいよ。
でもなぁ……。
適当な気持ちで付き合えない、と思うのと同時に、神谷の顔が頭に浮かんだ。
……なんで神谷?
「あなたちゃんモテるねぇ」
「モテてんのかなこれ……分かんない」
「モテてると思うよ。私、告白されたことないよ?」
ね?と微笑まれるが、どうしていいか分からない。女子同士のこういう会話って一歩間違えたらやばいからな……。
とはいえ、はるちゃんなので私は安心する。
「だったら嬉しいな」
「うん」
ふふっと和やかに笑い合って、他愛ない話を始めた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!