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第5話

5話
「…………」

「…………」

互いに動かず、じっと見つめ合う。

恐らく数秒間しかなかっただろうが、私にはすごく長く感じられた。


先に動き出したのは神谷だった。


スタスタと近付いてきて、頭にある私の両手の手首をそれぞれ掴んだ。

外される、と危機を感じた私は振り払おうとしたが、運動部でもない女子の力では男子に敵うわけがなかった。あっさり負けて両手を壁に押しつけられる。

そして改めて見つめられる、私の『秘密』――。


「……猫耳?」


ぴょこん、と私の頭に生えた猫耳が揺れた。





西暦、“2079”年。

日本では、予測通りかそれ以上に進んでしまった少子高齢化の解決策として、ある計画が実行されていた。



それは――――“他種族と人類の遺伝子を混ぜ、『半獣半人』を作る”こと。



半獣半人たちは、簡単に言えば、「獣の耳や尾を持つ、人間の姿をした生き物」だ。

一応言っておくと、半獣半人は“人間ではない”。そのため、差別する『人間』が後を絶たない。

そこで日本政府は、「人間」と「半獣半人」とで学校や職場を分け、世の中の平和を保つことにした。


「お願い……!このことは誰にも言わないで!」

両手を壁に押さえつけられたまま、私は神谷に必死に叫んだ。

半獣半人は年々増えてる。孤独ってわけじゃない。ただ――

「『人間』として生きたいの……!」

見た目は、紛れもなく『人間』だから。

普通の『人間』が羨ましいと小さい頃思った。一緒に過ごしてみたいのに、過ごせない。だったら、最初から『人間』のフリをしよう。

反対する親を説得して、せっかくここまで頑張ってきたのに――――まだ、終わりたくない!

「……ひゃっ!?」

ビクッと大きく体が揺れた。

神谷が私の猫耳を触ってきたからだと、少し遅れて理解した。

やば、猫耳触られるの弱いから変な声出ちゃった……!恥ず……。

「……ふーん。本物なんだな」

神谷がボソリと呟いた。

……疑ってたのかよ。

「……いいぜ。黙っててやるよ」

「ホント!?」

「ただし」

パァッと表情を明るくした私に、神谷は意地の悪い笑みを浮かべた。


「バラされたくなかったら……分かってるよな?」