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第16話

16話
口を塞がれた瞬間、普通は怖いと思うはずなのに、なぜか私はそうは思わなかった。

誰だろう、と純粋に不思議な気持ちで振り返ると――。

「……んん、ん?」

焦った表情の、神谷だった。

私が呼びかけたことで、神谷はハッとして私の口から手を離した。そして、私と業平くんを交互に見る。

「……えーと、悪い。邪魔して」

ばつが悪そうに目を逸らす。

私は構わなかったが、業平くんは違うようだった。

「……神谷くんか。悪いと思うなら、早く立ち去ってほしい。俺は赤城さんの答えを聞きたいんだ」

「あ、えぇと……私は神谷がいてもいいけど。返事するよ」

「待て」

私の声にかぶせるようにして神谷が言った。

「返事するな。赤城」

「……なんで?」

神谷の考えが読めない。どういうつもりで言ってきてるんだろう。

じっと見つめてみる。すると突然、正面から目が合った。


「……俺が、赤城を好きだからだ」


――え?

「ほとんど今、気付いたけど。いつからなのか分からねぇけど……恋愛的な意味で、好き、らしい」

「……マジで?」

「マジで」

少し、神谷が照れたように赤くなった。

これはマジな顔だ……。何回も見たことあるから、知ってる。

私はびっくりしてしまって、しばらく何も言えなかった。

けれど、答えは決まっていたから迷うことはなかった。


「……私も、好きだよ。神谷のこと」


「……は?」

「え……」

神谷がぽかんとし、業平くんが呆然とした。

二人とも、顔面白っ。……じゃないよね、真剣な話なんだから。

「ごめんね業平くん。さっき言おうとしたのはね、『私も好きな人がいるから、ごめんなさい』なの。今思えば紛らわしかったね、ごめん」

てへへと笑って、業平くんに頭を下げる。

数秒後に頭を上げると、羞恥からか真っ赤な業平くんが見えた。

「……紛らわしすぎだよ!!期待したじゃないか!!」

「ご、ごめん……」

「もういいよ!!お幸せにね!!」

やけくそのように叫んで、業平くんはどこかへ走り去っていった。

最後に祝福の言葉をくれるあたり、いい人だったのは間違いなさそうだ。業平くんが去った方角へ、私は感謝を込めて拝んでおいた。

「……赤城」

名前を呼ばれ、すっと冷静になる。

……そうだ。終わった気になってたけど、むしろこれからが本番だった。

私は、くるりと神谷を振り向いた。