ペトラが眠りにつくと、俺はそっと病院を後にした。
(あの痛み方、巨人に関して思い出そうとするとなるのか…。)
巨人の存在を無かった事にする為に、壁を造っていた巨人の硬質化は全て解き、壁の大部分は壊された。
巨人についての書物なども、末梢する事が命じられたのだが─…。
(まさかこの本に載っていたとはな…)
またペトラが苦しむなんて事が起きないように、図鑑は持ち帰ってきた。
何となく、あのページを開いてみる。
"壁外"と"壁内"という字だけが、古びているように感じた。
(…?)
その時、その文字の上に、ペトラが読み上げたのとは別の、ジャーマンアイリスの花言葉が目に入った。
それを読んだ俺は、小さく呟く。
「…なんだよ、それ…」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。