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第4話

居場所【リヴァイside】
一晩が過ぎて、俺はまたペトラのいる病院を訪れた。

この病院は巨人が出現する前、壁外だった場所に造られていた建物を修繕した物だ。
長い間人の手が及んでいなかったという事もあり、この付近は資源が豊富で、海も近いからとここが使われたのだった。

その為敷地があまり手入れされていないのが気になる所だが、中には見たことの無いような野花も様々に咲いている。
俺はそこから数本を摘むと、ペトラの病室に向かった。


「…ペトラ、入るぞ。」
いつものようにノックをして、部屋に入る。

ペトラは今日も来ると分かっていたからか昨日程に驚いた様子は無かったが、俺の持っている花を見ると目を丸くした。

「お花…ですか?」

「ああ。…3階からだと、海しか見えなくてつまらないと思ってな。」
そう言いながら、俺は窓辺に花を置く。

─きっと、少し前まではこの"海"を見る事なんて、夢の中の世界だったというのも、今のコイツは覚えてなどいないのだろう。

見ると、ペトラはさっきとはまた別の様子で、驚いたようにこちらを見ていた。

「…何だ。やはり俺の柄じゃなかったか?」

「い、いえ!ありがとうございます。その…嬉しくて。」

そう言って、本当に嬉しそうに微笑んだ。
「本当に、ありがとうございます。」

ああ、こういう顔もできるんだな… と、ここへ来て初めて自分に見せる緊張の解れた笑顔に、そんな事を思う。


ペトラはベッドから出て棚から瓶を取り出すと、水を張り、そこに花を差し込んだ。

「もう動いて大丈夫なのか。」

「ええ、お陰様で…。リヴァイさんから頂いたお花、しおらせてしまうのは勿体無いですから。」

「…そんな事より、元気になったら早く実家に帰って、両親を安心させてやれ。」


─コイツが重症を負った壁外調査の帰り道、俺に歩み寄ってきたペトラの父親は、娘に見つかる前に、と言ってペトラの手紙を見せてきた。
その横を通った馬車に、ボロボロになった娘が寝かされていたのも気付かずに。

あの時手紙の中でコイツは、俺に全てを捧げるつもりだと、そう言っていた。
だから…
今度は俺がお前の力になれればと、あの時からそう心に決めていたのだ。

だが、それもじきに必要無くなるだろう。
ペトラが家族の元へ帰る時、俺は今度こそ本当に… 自分の居場所を失ってしまう。
兵士でない俺を覚えている奴なんてもういないし、戦う事しか出来ない俺の居場所なんて無い。

ふと、地下街の事を思い出す。
俺の居場所は結局、あそこなのだろうか。


「リヴァイさんも、ご両親とは会われないんですか?
私の看病で、長い間帰っていらっしゃらないんじゃないかと思って…
お礼も言いたいので、是非会わせて頂きたいんです。」

俺はその言葉に何て答えるのが正解なのかも分からずに、包み隠す事もしないで言った。

「…悪いな。母親はとっくの昔にいねぇんだ。父親は、どんな奴かも分からねえ。」

「えっ…」
それを聞いたペトラが、きまりが悪そうな顔になった。

─俺はもう、この反応には慣れている。
自分の父親を知らないという状況も、あの世界では珍しくない事だった。
なのに…

「…すみません…」

どうして、お前の方が悲しそうな顔をするんだ。
俺は別に、そんな顔をさせたくて言ったつもりではなかったのに…


「…別に、気にしてねぇよ。無駄な気遣いはするな。
…それより、何か欲しい物とかはねぇか。」

─こんな時、どう接してやればいいのか分からなかった。
欲しい物をやれば元気を取り戻すかもしれないなんて、幼稚な考えだったけれど。


「ふふっ…」

その時、ペトラが小さく吹き出した。

「…何だ。」

「いえ… リヴァイさん、私には気遣いをするなと言っておいて、ご自分は気を遣っていらっしゃるから…
お優しいんだな、と思って。」

俺は思ってもみなかった言葉に、ペトラを見る。
ペトラの顔にはまた、さっきのような笑顔が戻っていた。

「…悪かったな。」

「いえ、嬉しいですよ。
そうですね、ではお言葉に甘えて… 本を持ってきて下さいませんか?一日寝たきりは退屈で…」

「そうか… 明日、持ってくる。」


─いつもそうやって、理由をつけて。
明日もまた、あと少しの自分の居場所を求めて、俺はここへ来てしまうのだ。

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ニャンコ先生@超低浮上
ニャンコ先生@超低浮上
昔画像投稿の方でも投稿していた進撃の巨人の小説を、手直しを加えつつ書いていこうと思います! ※会話形式の小説は好まないので、普通の小説風な書き方をします。
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