プリ小説

第7話

遠い記憶【ペトラside】
ザッ、ザッとほうきで掃くような音がして、私は目を覚ます。
すると今は何時なのかと疑うくらいの強い光が差し込んできて、思わず目をしかめた。

薄く開けた目蓋の向こうに、どこか懐かしい背中が見える。
三角巾をしてほうきをもった小さなその背中は、開け放たれた窓の前で掃き掃除をしていた。

「あの…」

私が呼び掛けると、振り返ったその人影は─ リヴァイさんだった。

「悪い。起こしたか。」

「いえ… あの…」

「何度かノックしたんだが、返事が無くてな。入ったらお前はまだ寝ていて… する事も無くて掃除をしていた。」

窓の外を見ると陽はもう高く昇っていて、そんなにも長い間寝ていたのだと気付く。

「私、こんな時間まで寝ていたなんて…!お掃除までさせてしまってすみません、手伝いま─」
「いい、お前は寝ていろ。もうじき終わる。」

そう言うとリヴァイさんは、それから数分と経たない内に、本当に部屋の隅から隅まで綺麗に掃除してしまった。

驚く私を余所に、三角巾を取って軽く着替えると、今度はポットにお湯を沸かす。
そして茶葉の入った缶を取り出し、2つのティーカップに紅茶を淹れた。

紅茶の良い香りが、狭い病室に広がっていく。

「ほら、紅茶だ。」
リヴァイさんが歩み寄ってきて、1つのカップを私に差し出した。

「あ、ありがとうございます。」
それを受け取ると、リヴァイさんもベッドの隣に座って紅茶を飲む。

私も一口飲むと、本当に何でもできてしまう人なんだと妙に感心させられてしまう程に美味しくて、つい言葉を漏らした。

「美味しい…。リヴァイさんの淹れる紅茶って、本当に美味しいですよね。」

すると、リヴァイさんが驚きを隠せない表情でこちらを見た。
何かおかしな事を言っただろうかと考えていると、リヴァイさんが小さく口を開く。

「俺は、ここに来てからお前に─… 今まで紅茶を振る舞った事があったか…?」

「え?…」

言われてみて、初めて違和感に気付いた。

確かに、ここで紅茶を飲むのは初めてだった。
彼とは、ここで会うまでの面識が無い。

でもさっきの言葉は、私の本心を口にした筈で…
リヴァイさん以外にこんな美味しい紅茶を淹れられる人なんて私は知らない。
それに…

どこか懐かしいあの味は、間違いなくこの人の物だと、体が訴えているようだった。


「どうした? …何か、思い出したのか?」
リヴァイさんが、どこか不安そうに聞いた。

「いえ…。 だけど、何か変なんです…」

「…何がだ?」

でも、私はそれには答えず、別に口を開く。

「リヴァイさん… 前に、私達は戦友だと仰っていましたよね。それって、何のなんですか。」

私は、知りたいと思った。
知らなければいけない気がした。

「…別に、悪い事じゃねえよ。 お前が気にする必要は無い。」
リヴァイさんが、目も合わせずに言う。

最近、ようやく打ち解けてきてくれたと思ったのに。
まだそんなに私は軽く見られていたのかと思うと、悲しくて…

この時はつい、カッとなってしまったのだと思う。


私は手荒くカップを机に置くと、大声でリヴァイさんに言った。

「何でですか! いつもいつも、そうやって話をはぐらかして…っ!
そんなに私を弄ぶのが楽しいんですか?!
本当はリヴァイさんの言っている事、全部嘘なんじゃないで─」

「答える必要は無いと言っている!!」

リヴァイさんの見た事も無いような剣幕に、私は言葉が出なくなった。


リヴァイさんは我に返ったようにハッとすると、上着を握りしめ、音を立てて椅子から立ち上がった。

「…邪魔をした…っ」

それだけ言うと、真っ直ぐ振り返る事も無くドアへと向かう。


「リヴァイさん…!」

私がそう呼び掛けても、彼はそのまま黙って部屋を出ていき─…


次の日、リヴァイさんがお見舞いに来る事は無かった。

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ニャンコ先生@超低浮上
ニャンコ先生@超低浮上
昔画像投稿の方でも投稿していた進撃の巨人の小説を、手直しを加えつつ書いていこうと思います! ※会話形式の小説は好まないので、普通の小説風な書き方をします。
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