そう言った半獣人はひどく驚いた顔をしていた。
そりゃそうか。
街では吸血鬼は死神的存在として扱われているんだから。
俺はわざと冷たい態度をとる。
どうせ怖がってすぐに出ていくだろうから。
だが、こいつは違った。
予想もしない言葉が帰ってきた。
なんだこいつ。
吸血鬼だってわかって喜び始めやがった。
そんな奴今まで1人もいなかったのに。
皆真っ青な顔をして逃げていったというのに。
相変わらず無愛想な態度で名を名乗る。
俺はなんだか小っ恥ずかしくなって顔を背ける。
こいつがいると調子が狂う。
俺はこいつを1晩泊めることにした。
案外面白そうだから。
それと…
寂しさが紛れる気がしたから。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
俺は勢いよくベッドへダイブする。
ふかふかで気持ちがいい。
噂で聞いたことあった。
「獣人殺しの吸血鬼」
そんな名前が付いていた気がする。
だけど、その名前を聞いても不思議と恐怖心はなかった。
自分でも理由はわからない。
でも、今日わかった。
吸血鬼は優しいって。
皆に教えてあげようかな、とも考えたけど
これは秘密にしておこう。
彼と、僕の2人だけの秘密。
俺はいつの間にか深い眠りに付いた。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
俺はゆっくりと体を起こす。
そういや、昨日はおかしな奴が家に来たんだっけ。
俺は独り言のように呟く。
すると、キッチンの方からいい匂いがしてきた。
俺は一階へと階段を降りていくと、
ジンがキッチンに立っていた。
机にはとても美味しそうな料理が並んでいた。
トロトロの丁度いい焼き加減のスクランブルエッグに香ばしい香りを漂わせているトースト。
それから甘くて美味しそうなイチゴジャム。
自然とお腹が減ってきた。
俺は席について朝食を取り始める。
俺は黄色いスクランブルエッグを口に入れる。
こんなに美味しい朝食を食べたのはいつぶりだったか…。
俺は無言で食べ続けた。
あっという間にたいらげて、ジンに礼を言った。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
テオはその場から去ろうとした。
でも、俺はなんだかよく分からない衝動に駆られて思わず引き止めてしまった。
上手く言葉が出てこない。
言いたい、伝えたい。
テオはしばらく考え込んだ後、一言だけこう言った。
そういって一瞬で消えてしまった。
テオとの秘密の関係。
誰にも言っちゃいけない約束。
……To be continued
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。