何が起きたのか理解出来ていない。
目の前にはトラック。
そして
真っ赤に染まったテオくん。
喉がヒュウヒュウと鳴る。
声が出ない。
息が段々荒くなっていく。
冷たい汗が背中をつー…と流れていく。
死んじゃう、死んじゃう。テオくんが。
俺の大好きな…テオくんが。
助けて、誰か
助けて…!!!
気がつくと周りは真っ白な世界だった。
そこにいるのは俺と、倒れているテオくんと
吸血鬼 テオだった。
テオくんに血をあげ…るって事…?
三分の一って…かなりの量だ。
でも、それで…テオくんが助かるのなら…
テオは思い切り俺の首に噛み付いた。
テオに血を吸われている感覚がある。
噛まれているところが熱く、ズキズキと痛む。
そう言うと、テオはテオくんの首元に噛み付いた。
…
数十分後、
テオはやっと首元から離れた。
顔がカッと熱くなるのがわかった。
でも、テオの目は苦しそうだった。
こうなる事って…
テオくんが死んじゃうってこと?
自分の心臓が大きく脈打ったのがわかった。
俺が…死ぬ?
じゃあなんでテオくんが…??
言葉を切って、テオはくるりと後ろを振り返る。
代わり?
つまり、代わりって…
テオが死ぬ?
そんな、そんな馬鹿な話あるか。
テオだって、俺の大事な親友…なのに。
テオはそれ以上口を開かなかった。
あぁ、わかった。
テオの好きな人、だよね。
好きな人と約束してきたんだね。
俺は後ろからテオに抱きついた。
テオは涙を流していた。
とても綺麗な、宝石みたいな涙だった。
そう言い残して、テオは光となって消えてしまった。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
暗い闇の中、俺はさ迷っていた。
確か、じんたんがトラックに轢かれそうになった所を勢いで飛び込んで…
じんたんの無事を確認したい。
だけど真っ暗闇で何がどうなっているのかさっぱりだ。
俺はあちこち出口らしきものを探してみたが、全く見つからない。
痺れを切らしそうになっていると…
どこから現れたかはわからないが、
あいつがいた。
一気に力が抜けていく感じがした。
すると、あいつは俺に何かを見せてきた。
それは鏡だった。
鏡の向こうには真っ白な空間。
そして…
じんたんがいた。
向こうにいるじんたんは泣きながら叫んでいる。
うわ、まじかよ。
俺、死ぬのか…
とりあえず、難しい事は置いといて、
それが1番知りたかった。
あぁ、やっぱりな。
運命には抗えないもんな。
死ぬんならじんたんに告白しとけば良かった。
あのイルミネーションの場所で。
俺は勇気が出なくて…なかなか言い出せなかった。
こんな事になるならすぐに言えば良かった。
返事はどうだろうと、気持ちだけでも伝えられただろうに…
ぶっちゃけ、かなり悔しかった。
この重たい気持ちを持ったまま死ぬなんて…
絶対したくなかったのに。
とあいつが言いかけた時、
俺の首元に痛みが走った。
あいつが俺の首元に噛み付いていた。
ジクジクとした痛みが俺を襲う。
じんたんが、俺が死なないために、
自分の血を分けてくれた…のか?
じんたん…お前、どんだけ優しいんだよ。
馬鹿じゃねぇの?
こんな俺のために必死に…
そういって、テオは消えていった。
……To be continued
次回 最終話
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。