今、私は、最悪の偶然に直面している。
皆と来た、ファミレスで、案内された席に向かうと、その隣のテーブル席で勉強しているのは、、、、。
いやいや、待て待て、全然よくない!
かつ兄と目があってしまって、お互い固まったまま。
驚きと気まずさと、もう、いろいろ入り混じっている。
かつ兄と喧嘩してるなんて、みんなに知られたら、周りを気まずくさせてしまって、申し訳ない。
ここは、普段通りっぽく、意識していないように、演技しないと、、、
一番肝心なのは、確保する、席の位置の問題。
かつ兄と、対角線上の席を狙いたい。
そうすれば、お互い会話しなくても、不自然じゃない。
とりあえず、一番端の席を先に確保だ!
切島!余計なことを、、、
気まずすぎて、かつ兄も私も、お互いになかなか席につこうと動き出せない。
先に座れ!とでも言うように、視線をお互いに送り合っている。
芦戸、、鋭いな、、。恐るべし、、。
ここで、急にけんかの原因を話してもな、、。
空気が重すぎて、死にそう、。
私たち兄弟の問題なのに、皆を巻き込むのもアレだし、、。
ごまかしてくれたのかな、。
ちょっと無理があるけれど、皆、納得しているようだし、。
とりあえずは、よかったのか、、?
結局、かつ兄が先にドスンと席に座ったから、私はその隣に、いつもより10cmくらい間隔を多めにとって、恐る恐る席についた。
そのあとは、みんなの勉強を見てあげたが、かつ兄と私は、それぞれ、違う人をみていたから、言葉を交わすことはなかった。
帰るときも、かつ兄は用事があるらしく、切島と一緒にどこかへ行ったが、おそらく、私と二人で帰ることになるのを避けたかったんだろう。
ありがとう、二人とも。
きっと、私がかつ兄となにかあったんだと、見抜いているんだろう。
でも、私から、無理に吐かせようとはしてこない。
話す気になったときには、相談に乗るから、と、
そういうことなんだろう。
でも、ごめん。今は、まだ、話したくないんだ。
話せる気分じゃない。
かつ兄に、俺はお前の兄貴じゃない、といわれたなんていったら、きっと、二人はかつ兄をとがめるだろう。
でも、いままで一緒に過ごしてきたから知ってるんだ。
私に対しては、かつ兄は、考えなしに、暴言を吐いたりすることはない。
きっと、なにか思うことがあって、そういう発言を私に浴びせたんだ、、。
ねぇ、かつ兄。
何を今、思っているの?
話さなくても、かつ兄の気持ちを悟ることができる時もあるけど、、
今回は、全然わからないよ。
兄貴じゃないなんて、言わないでよ。
かつ兄が兄貴じゃなくなったら、世界で私の見方は、誰もいなくなる。
もう、かつ兄って、よんではいけないの?
どうして、私を傷つけるってわかってるはずなのに、私を突き放すような言葉をいうの?
何も言わずに私のそばから離れていかないでよ、、。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。