初めて、、、親不孝な娘になっちゃった、、。
こんなに逃げて、、なんだって言うんだろ。
そういえばかつ兄は、私のことを、今まで一度も妹だって言ったことなかったな、、。
私が血のつながらない赤の他人だから?
そもそも、いつから、、私は爆豪家の養子だったの?
赤羽は、私と小3まで会っていたと話してた。
ということは、私が、爆豪家に来たのは、少なくとも小3以降、、、。
私の気持ちをあざ笑うかのように、空は雲一つない綺麗な夜空がいっぱいに広がっていた。
会いたい、、、。
ホントの家族に会いたい、、。
なんで、私は捨てられたの、、?
こんな惨めな思いをさせる親なんて最低だ。
私なんか生むんじゃないよ、。
育てる気がないなら。
会って、ぶん殴ってやりたい。
私が、養子ってことは、、、母さんは、、、
いや、光己さんは、私とかつ兄が死にかけたら、、かつ兄を助けるのかな、、。
だって、お腹を痛めて生んだ、我が子だもんな。
それで当然。
自分の子のほうが可愛いはず。
よく考えれば、わかることだった。
かつ兄の名前は、父母から1文字ずつとっているのに、
私はそうじゃない。
きっと私は、夫婦の愛によって生まれた子供じゃない。
両親にとって、いらない子供だったんだ。
『ねえママ!今日ね、逆上がりできたんだよ!』
『あら、すごいわ!ママもみたかったな~』
幼稚園からの帰り道なのか、仲良く手をつないで帰る母子の姿が目に映る。
いいな。
私が小さいときは、おそらくあんな会話を交わす人などいなかったんだろう、
私の記憶の始まりは、病室のベッドで起きたところから始まる。
目を開くと、私のことを、心配そうに覗き込む夫婦らしき人と、私と同年代くらいの男の子がいた。
『よかったわあなた!道端で倒れていたから心配したのよ!』
あなた?私の名前か、、?
この人たちは誰だ、、?なんで私の名前を知っている、、?
『父さんはもうほんとに心配でご飯も喉に通らなかったよ』
父さん?
もしかして、この人が私の父?
とすると、あとの二人は私の母と兄か弟か、、?
『ほら!勝己もお兄ちゃんなんだから何か言ってあげなさい!』
兄はかつきというんだ、、。
そうか、、。きっと私は記憶がなくなってる。
でも、それを告白すれば、この人たちは悲しむだろう。
それだったら、ちゃんと妹役を演じなければ
『だ、大丈夫だよ兄さん』
『兄さん?前までかつ兄って読んでたのに普通に読むのね~』
え? そうだったのか
『か、かつ兄!心配しなくても、平気だよ。だからそんな暗い顔しないで』
『、、、ごめん。俺が目を離したせいで、ヴィランに襲われたんだもんな、、。』
『ヴィラン?』
『ああ。目撃した人は、白髪の男だと言っていた。まだ、そいつは捕まってねぇが、、。』
『でも、本当によかったわ。脳に異常もなかったし、軽いかすり傷で済んで。』
あのときから、私は爆豪家の娘を演じ続けてきたんだよな、、。
私が初めて爆豪家に着いたときは、自分自身が養子だって、知っていたはずだし、それを前提に、家族のみんなが接してくれていたはず。
でも、私がヴィランに襲われて以来、記憶をなくしていることを知らない家族は、私が自分を血のつながった家族であると誤解していたことを知らないのだろう。
実を言えば、うすうす、血の繋がりがないことを感じてた。
そもそも容姿も髪質も似ていないし、個性もまるで、両親のものを引き継いでいない。
よく、かつき君の友達?って聞かれたっけ。
今頃、家族は私の家出を不思議がってるはずだ。
私が、自分が養子だと知らなかったことを告白すれば、私が記憶を失っていること遠回しに自白することになる。
ん?気のせいか?今、かつ兄の声がしたのは、、。
ここの場所がすぐわかるはずは、、
落ち着けば、、かつ兄になら、話せるかもしれない、、。
かつ兄は、藪から棒の私の発言に、戸惑いを隠せずにいる。
かつ兄は、頭を抱えて、私の前で、しゃがみこんでしまった、、。
こういうときって、なんていうのが正解?
謝罪の言葉しか頭に浮かんでこない、、。
どれだけ謝罪しても、かつ兄の心の傷は癒えないのに、、。
しゃがみこんだままだけれど、目は真っすぐ、私を見つめているかつ兄。
かつ兄の目力って、いつもすごい鋭くて感心する。
疑念を抱かせる余地を与えないほど、透き通ていて、曇りのない、目。
かつ兄にいわれると、そうなんだと思えてくる。
私の悩みが急に、馬鹿らしくなる。
それに、私の気持ちを、見透かしてるかのようにわかってくれている。
きっと、私を生んで捨てた親よりも、いや、
世界中で、一番の、
私の理解者だ。
こんなに、いい兄と巡り会えたなんて、私は幸せすぎる。
そうだ。べつに、私のおやが、わが子を捨てるような、くず野郎でも、
逆に、捨てられたおかげで、かつ兄の妹になれたし、
かつ兄から、一番近いところで、こうして守ってもらえているんだ。
私はしゃがみこんでいるかつ兄に思いっきり抱きついた。
わたしは捨てられた、不幸な子供じゃない。天涯孤独でもない。
見方は、ちゃんと、ここにいる。
私のことを、ずっと心配してくれて、いざていうときは、助けてくれて、安心して身を任せられる人が。
さっきまで、気味悪く思えていた星空は、今では、星々が一つ一つ輝いて、私たち兄弟を優しく包み込んでくれているように感じた。
この程度のことを、引きずっているようじゃ、プロヒーローになんて、慣れないよね、、、
かつき、、。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。