そしてHRも終わり
1度職員室へ戻る
実弥くんから名簿を受け取り
さっきの女の子を確認する
顔写真と共に名前が書かれている
どこか聞き覚えのある名前。
まだ大学生の頃に
頻りに実弥くんが言っていた名前。
この子、か。
実弥くんが昔住んでたと言っていた所と
同じところで
実弥くんが言っていた見た目で
雰囲気もそんな感じ。
あえて小声で焦ったように実弥くんへと近寄る
自分のデスクで何か小テストの採点を
していたみたいで
そう言いながら
名簿の
あなたという子の所を指す
なに、嬉しそうに微笑んでんのよ。
私の前でこんな優しい顔で微笑んだことないのに
かまをかけてみると
デスクに向いていた目線が上がり
ゆっくりと私を見据える
私が勘づいていて
カマをかけたのを見透かされたのか
実弥くんはじっと私を見たまま微笑み
そう言った。
小さい声だけど力強く
どこか嬉しそうに。
あえて私に教えてくれたのね。
お前は眼中にない、と。
俺にはあいつがいるから。と
……哀れだね。
あんな餓鬼より私の方がいいと
思わせるだけだから……
私があなたをどれほど好きか
分からせてあげなきゃね、
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。