プルル プルル プルル
翌日の早朝
〜ヘリポートにて
ー ー ー
藍沢先生へ
私は不器用なので藍沢先生への感謝をこの手紙に書かせてください。
藍沢先生にはたくさん迷惑をかけましたね。私が痛みを我慢してた時、諦めかけてた時。側にいてくれたのは藍沢先生でした。
私が生きたいように生きればいい。藍沢先生、前に言ってくれましたよね。それから考えました。私の生き方ってなんだろう。でもやっぱり分かんなくて。だから1日1日を普通の高校生として生きようと思ったんです。勉強をして、いろんな人と話して。私に未来はないけど今はある。今を後悔しないように生きようって思いました。
藍沢先生は忙しいのに毎日私の事を屋上に連れてってくれましたよね。私の願い覚えてますか?私の事を忘れないでほしい。私が生きてたって事を憶えててほしい。今でも死ぬのは怖い。でもこうなる運命だからそれを受け入れるしかないですよね。
藍沢先生は責任感があって強いお医者さんだと思います。前に私の事を助ける事ができないって謝ってましたよね。責任感が強いから、私が死んだあとに私の病気をなんとかしようって無理してませんか?私のためにっていろいろ調べてくれてませんか?
でもそんな無理はしないでください。藍沢先生は無力じゃない。何もできないって言ってたけどそんな事ない。
私は藍沢先生にたくさん助けられましたよ。たくさんの言葉をもらいましたよ。
藍沢先生が無理して頑張ってくれるのは、私も辛いです。だから無理はしないで。
ありがとう、ありがとう。
藍沢先生、支えてくれてありがとう。
堀部あなた
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〜ヘリポートにて
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それからも毎日が戦いだった。
人の命は、はかなくて小さくて。
でも彼らは全力で救おうとしてる。
人の命は素晴らしいものだから。
生きてるって奇跡だから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!